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lw´‐ _‐ノvの超現実的愛情のようです #7


2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:34:51.28 ID:Fhcu/PQt0
-素直シュールの超現実的愛情-


あらすじ

シューは今は亡き祖父・荒巻スカルチノフの屋敷で奇妙な壷を手に入れる。

その壷には荒巻に大恩を受けた男、内藤ホライゾンの亡霊が宿っていた。

内藤は霊能力を使い、荒巻の子孫であるシューに恩返ししようとするのだが……


lw´‐ _‐ノv:素直三姉妹の末っ子。小学生。このお話の主人公(今回は出てこないけど)。
      極端に無口だがワガママであくどい。

( ^ω^):壷に住み付いている亡霊。
      荒巻への恩返しのため、子孫であるシューにコキ使われている。
      霊能力で色々不思議な現象を起こす。

川 ゚ -゚):三姉妹の長女。高校生。メカマニアの天才少女。

ノパ⊿゚):三姉妹の次女。中学生。脳筋の格闘バカ。
.∧_∧
( ´_ゝ`):三姉妹の父親。殺人・強盗の罪でニューソク刑務所に服役中。
      しかしその理由には何か複雑な事情があるみたいだ。
∧∧
(,,゚Д゚):ニューソク刑務所の看守。
    AAを使い分けるのが面倒なのでみんな同じ顔。

 
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:37:14.46 ID:Fhcu/PQt0
1.
どこにでもあるような小さな町から少しだけ離れた丘に、

どこにでもあるような小さな家が建っていた。

だけどどこにでもあるような一家の末っ子、素直シュールは、

ちょっとどこにもいそうにない女の子だった。

実家でもらった壷から現れた亡霊・内藤ホライゾン。

彼はシューの祖父に受けた恩を返せぬまま非業の最期を遂げた少年。


「俺ならドラえもんをもっと上手く使える」


これはそんな妄想を抱いたことのある人に贈るお話である。




素 直 シ ュ ー ル の 超 現 実 的 愛 情 の よ う で す

#7 悪夢、現実、また悪夢、また現実




 
 
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:39:13.11 ID:Fhcu/PQt0
2.
ニューソク刑務所。

ここに入って十年以上になるが、俺はいまだに消灯時間を過ぎても寝付けない。

眠りは浅く、重苦しい。苦痛ですらある。

ブツ切れのまどろみの合間には、決まってあいつの顔が見える。


(‘_L’)「無駄だよ、兄者。何をやっても無駄だよ、全部無駄だよ。みーんな無駄だよ」


あいつは同じ言葉を繰り返す。

俺の体の底にかすかに残った希望とか、夢とか、とにかくそんな……俺をほんのわずかだけでも

前向きにしてくれるものを、根っこから引き抜こうと。


(‘_L’)「お前の頭の中じゃどんなソロバンを使ってるんだ?

     何十年かけても無理だったことがある日突然パッと出来るようになるとでも?」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「失せやがれ」


精一杯の虚勢を張る。だが、奴は俺の言葉に怯むような野郎じゃあない。

 
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:41:14.47 ID:Fhcu/PQt0
3.
(‘_L’)「失せろ? お前が俺を呼んでるんじゃないか」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「……」


フィレンクトは額に開いた穴からとめどなく赤黒い血を流しながら、鉄格子の向こうで笑う。

ツラを伝う血が奴の笑顔をより凄惨なものとする。


(‘_L’)「朝まであと何時間だ?」


俺は時計を見る。

ベッドに入った瞬間から時計の針はその動きを鈍くする。

まるで俺に朝など永遠に来ないとでも言わんばかりに。

.∧_∧
( ´_ゝ`)(これは悪夢なのか? 覚醒と昏睡の合間に俺が見ている幻覚なのか?)


フィレンクトは尚も俺に話しかけ続ける。

口の奥で地獄が燃えているかのように、果てしなく絶望の言葉吐き出し続ける。


 
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:43:29.29 ID:Fhcu/PQt0
4.
不意に朝が来た。

待ち望んだ朝日が強化ガラスの明り取りから差し込む。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「うう」


俺は体を起こしてベッドに腰かけ、眼を擦った。

同時に監房の外でブザーが鳴り、看守が割れ鐘じみた怒声を張り上げる。


「点呼を取る。収監者は外に出て並べ。直立不動の姿勢で一歩も動くな!」


ベッドの上の段から同房の友・ニダーが下りてきた。

.∧_∧
<ヽ`∀´>「アンニョンハシムニカ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「ああ」


こいつもまた俺と同じ、強盗殺人の罪でこのニューソク刑務所にいる。

まあ、俺よりちょこっと件数は多いけどな。

 
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:45:07.47 ID:Fhcu/PQt0
5.
点呼が済んだら食堂で楽しい朝食だ。

まったくムショの飯ってのは驚きの連続だ。

一体どんな工夫を加えたらこんな味になるんだっていうような物体が次々に現れる。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「今日のこのスープはまた一段とマズイな」
.∧_∧
<ヽ`∀´>「いらないならくれニダ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「やるよ。全部食ったら後で戻しそうだ」


ニダーの悪食が羨ましい。

飯を終えたら楽しいお出かけだ。

何重にもある金属探知機のゲートを通り過ぎて、所内の家具工場へ向かう。

ここでは椅子とか机とか色んな木工品を作っていて、シャバへ売りに出しているという寸法だ。

時々看守自身が気に入ったのを直接買い取ったりもする。




 
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:47:08.72 ID:Fhcu/PQt0
6.
刑務所ってのはつくづく空気が重い場所だ。

本当にどこにいても少しも気が休まらず、朝から晩まで高校のテスト時間中みたいな気分だ。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「彫刻刀を使う許可を下さい」
∧∧
(,,゚Д゚)「許可する」


刃物……というか、使いようによっちゃ人を殺せそうな道具はすべて使用に許可がいる。

看守が見張っている貸し出し所で彫刻刀を借り、今取り組んでいるコーヒーテーブルに向かった。

こいつはまったくもって傑作だ。

すでに眼をつけている看守もいるし、きっといい値で売れるだろう。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


昼飯を食いに一度食堂に戻り、変な味のスパゲティをすすっていると、所内放送が流れた。


***「囚人番号1210号、面会だゴルァ。飯食ったら面会室に行け」


 
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:49:19.74 ID:Fhcu/PQt0
7.
.∧_∧
( ´_ゝ`)「おっとっと、今日は土曜日か。こうしちゃおれん」


飯を掻き込んで口元を拭き、一度房に戻って一番いい服に着替える。

一番いいっつってもまあ、みんな同じ青い囚人服だけどな。

髪を撫で付けて看守の詰め所に行き、自分の名前と囚人番号を告げて面会室に通してもらう。


ノパ⊿゚)「とーちゃん!」


椅子から跳ね上がったのは、俺の最愛の娘の一人だ。

自然と目元が垂れてくる。

この世にこの子ほどかわいい女の子が存在するか? いやしねえ。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「見るたびに美人になるな、お前は」

ノパ⊿゚)「おー」


ヒートはひまわりのように笑った。畜生、かわいいぜ。

 
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:51:10.77 ID:Fhcu/PQt0
8.
一緒にテーブルにつき、しばらく話をする。

他愛のない話さ。下らない雑談だ。

だが俺にとっては何よりも幸福な一時だった。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「運動もいいが勉強もしろよ。俺も数学とか全然ダメだったが……」

ノパ⊿゚)「わかった。あ、あと恋人できたよ!」
.∧_∧
(;´_ゝ`)「ブ――――――――――――!!」


とりあえず口に含んでいたコーヒーをぶちまける。


ノハ;゚⊿゚)「どうした、とーちゃん!」
.∧_∧
(;´_ゝ`)「な……何でもない。何でもないとも。動揺してるとでも?」

ノパ⊿゚)「?」
.∧_∧
(;´_ゝ`)「そっ……それっそれでだな、そいつは一体、どういった……その……どういう男……」

ノパ⊿゚)「とーちゃん、コーヒーがズボンに垂れてるぞ」


 
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:53:22.09 ID:Fhcu/PQt0
9.
.∧_∧
( ´_ゝ`)「ん? ああ、こりゃいかん」

ノパ⊿゚)「そいつ、いいやつだぞ! カッコイイんだ!」
.∧_∧
(#´_ゝ`)「俺よりもか!」


うわっ! 何言ってるんだ、俺は!


ノパ⊿゚)「えっ!? えーと、うーんとなー……わかんない!」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「そうか、そうか。変な質問をしたな。悪かった」


看守がこっちに目配せしている。


ノパ⊿゚)「ん? もう時間か」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「残念だな。また来いよ」

ノパ⊿゚)「うん!」


握手をして俺たちは別れた。抱き上げてやりたいがそれは規則違反だからな。

 
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:55:38.05 ID:Fhcu/PQt0
10.
自分の房に戻りながら、俺はひしひしと胸に募る切なさを感じていた。

.∧_∧
(;´_ゝ`)(こ、恋人……!? あのヒートにか? まだ中学生だろ……)


うう、どんな野郎だ。

ヒートはあれで純情だし、傷付くような事があったら……

ああ心配だ……俺の娘だぞ? クソ……!!


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


翌週は上の最愛の娘が来た。

嬉しいね。クリスマスみたいだ。


川 ゚ -゚)「父さん」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「どこのお姫様かと思ったぜ。相変わらず美人で嬉しいよ」

川 ゚ -゚)「父さんも元気そうだね」


 
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:57:16.43 ID:Fhcu/PQt0
11.
クーから近々末っ子に会って欲しいという話を切り出された。

もうそろそろ知る頃だろう、と。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「そうか。緊張するな」

川 ゚ -゚)「シューはあれでなかなかナイーブなんだ。心配だよ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「……」

川;゚ -゚)「ち……違うよ! 父さんが別に、そんな……犯罪者だからって、そういう」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「いや、そうじゃねえ。俺は貶されて当然の人間だが、シューがかわいそうだと思って。

      学校でイジメられないか」

川 ゚ -゚)「それは大丈夫。シューは一度イジメられたら300倍くらいにして返す性格だからね」
.∧_∧
(;´_ゝ`)「そうじゃねえだろ……」

川 ゚ -゚)「うん。でもずっと隠しとくのは無理だと思う」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「そうだな……そうだろうな。じゃあ、次の機会に頼む」

川 ゚ -゚)「わかった」


 
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 22:59:17.62 ID:Fhcu/PQt0
12.
∧_∧
( ´_ゝ`)「ああ、そうだ。それから」

川 ゚ -゚)「?」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「ロボットバトル選手権二連覇おめでとう」


俺はポケットに入れておいた、小さな陶製のトロフィーを取り出した。

下に穴が空いていて中は空洞になっている。

こうしておかないと看守が何か隠してあると勘違いして没収しちまうからな。

ちなみにちゃんと赤いリボンもつけてある(元はチョコレートの包装紙だけど)。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「ロボットらしく金属で作りたかったんだが、探知機がなあ……」

川 ゚ -゚)「父さん、知ってたの……」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「そりゃ知ってるよ。テレビでやってただろ?」


テレビを自分の房に置けるのはいい子の特権だ。

ま、俺は持ってないから隣の奴に見せてもらったんだけどな。

 
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:01:12.58 ID:Fhcu/PQt0
13.
川 ゚ -゚)「ありがとう。凄く嬉しい」


クーの目元を見て俺は肩を竦めた。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「大したもんじゃない。泣くなよ」

川 ゚ -゚)「泣いてない。どうやって作ったの?」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「所内に陶工の養成所みたいなところがあってな。そこで焼いた」

川 ゚ -゚)「へえ。何でもあるんだ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「小人閑居して不善成すってな」


その日はそこで面会時間が来た。

あんなに喜ぶとは思わなかったな。

しかしシューのことが気がかりだ。

「やあ、はじめまして。俺は君の父親だ。殺人と強盗の罪で一生ここにいることになってる、よろしく」

……一体どんなツラで会えばいい?


 
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:03:05.96 ID:Fhcu/PQt0
14.
またある日の平日、面会があった。

娘たちは土曜日か日曜日しか来れないから、彼女たちじゃあない。

面会室に行くと意外だが嬉しい顔があった。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「おいおいおい、どうした急に?」
.∧_∧
(´<_`  )「いや別に。近くまで来たんでな」


懐かしさが込み上げて来る。

こいつは仕事が忙しくてあんまり面会に来なかったからな。

.∧_∧
(´<_`  )「元気そうだな。安心したよ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「飯が美味いもんでね」
.∧_∧
(´<_`  )「冗談だろ?」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「冗談だ。シャバの飯が恋しいよ」
.∧_∧
(´<_`  )「ほら、モスのハンバーガー持ってきてやったぞ」


 
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:05:17.53 ID:Fhcu/PQt0
15.
久々のジャンクフードは美味かった。

.∧_∧
(´<_`  )「どうだ?」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「舌が溶けちまうよ」


しばらく近状を話し合った後、弟者が切り出した。

.∧_∧
(´<_`  )「家具工場で働いてるって言ったな。実は、得意先の一つに家具の工房があるんだ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「ふーん。でかいのか?」
.∧_∧
(´<_`  )「かなり。そこが腕のいい職人を欲しがってる」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「おい、俺の仮釈放は……」
.∧_∧
(´<_`  )「わかってる。最短でもあと10年だろ。

       なあ、兄者。兄者がここにいるのは正直、自業自得だ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「だろうな」


お前と違って俺はデキが悪くてね。そう言いかけて、言葉を飲み込む。

 
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:07:05.68 ID:Fhcu/PQt0
16.
久々に会ったのにイヤミもないだろう。

.∧_∧
(´<_`  )「兄者の過去は失敗だ。失敗に失敗を重ねて結果がここだ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「……」
.∧_∧
(´<_`  )「だがうまく行けば後10年で出られる。100年後じゃない。

      なら、未来のことも考えるべきだ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「俺なんかが職人になれるかね?」
.∧_∧
(´<_`  )「10年あればいっぱしの家具職人になれるさ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「そうだな……」


未来か。考えると不安になるせいか、あまり視野に入れてなかったが……

.∧_∧
( ´_ゝ`)「まあ、先のことはわからない。でも考えとく」
.∧_∧
(´<_`  )「そうしてくれ。じゃあ、またな。次はいつになるかわからないが……」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「あー、待った。実は一つ、聞きたいことが……」


 
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:09:06.33 ID:Fhcu/PQt0
17.
.∧_∧
(´<_`  )「何だ?」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「娘には何か聞きにくくて……」
.∧_∧
(´<_`  )「カーチャンか」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「ああ」
.∧_∧
(´<_`  )「まだ許してないみたいだったぞ。お前のことは一言も口に出さない」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「……」
.∧_∧
(´<_`  )「安心しろ。離婚の予定とかはないみたいだしな」
.∧_∧
(´<_`  )「そうか。ありがとな」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「いいさ。いい子にしてろよ」


妻については娘が話してくれる近状と手紙だけが頼りだ。

多分、お互いに一番マズイ状態なんだと思う。

どっちから謝っていいのかわからないんだ。

そりゃあ、俺から頭を下げるべきなんだが……いや、このことを考えるのはやめよう。

 
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:11:43.65 ID:Fhcu/PQt0
18.
労務がないある日のこと。

俺はベッドに横たわってぼんやりしていた。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「ツイてねえ」


何となくそんな言葉が口から零れ落ちた。


<ヽ`∀´>「そうでもないニダ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「?」


昼寝をしているものだとばかり思っていたニダーが、上のベッドで俺の独り言に答える。


<ヽ`∀´>「あんたはツイてないわけじゃないニダ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「ツイてるんならムショなんかにいねえよ」

<ヽ`∀´>「あんたは家族の愛情と尊敬を失ってないニダ。その証拠に毎週誰かが会いに来てるニダ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「……」


 
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:13:15.53 ID:Fhcu/PQt0
19.
ニダーの口調は半分眠っているかのようだ。

まるで夢現のように。


<ヽ`∀´>「人生で最も惨めなこととは、世界のすべてからほったらかしにされる事ニダ。

      社会、家族、友人、同僚、それに好機や出直す機会、出会い……」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「お前の祖国のことわざか?」

<ヽ`∀´>「違うニダ。ウリの経験ニダ」


そう言えばこいつが面会に行ってるとこは見たことがない。


<ヽ`∀´>「そういう人間はカネか麻薬しか救いが無くなるニダ。

      最後に結局ここか墓穴に行き着くニダ。

      でもあんたは違うニダ……魂の救済があるニダ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「ありがたいお言葉だが、俺も終身刑でね」

<ヽ`∀´>「あと10年もすれば仮釈放委員会の審査を受けられるニダ」


 
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:15:08.65 ID:Fhcu/PQt0
20.
.∧_∧
( ´_ゝ`)「確かにそういう慣例らしいが……」


それは、俺の唯一の希望だ。

俺が更に何か言おうとした時、監房の出入り口に誰かが現れた。


ミ,,゚Д゚彡「兄者ってのはどっちだ?」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「俺だが」

ミ,,゚Д゚彡「じゃあついて来な」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「どこへだ?」

ミ,,゚Д゚彡「お前に拒否権はない。ジョルジュさんがお呼びだ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「ジョルジュが……?」


忌まわしい名前だ。

ジョルジュ長岡、ニューソク刑務所最大の囚人組織の長で、実質ここの支配者でもある。



 
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:18:41.25 ID:Fhcu/PQt0
21.
シャバでは名の知れた悪党で、殺人、恐喝、売春斡旋、麻薬関係など数々の組織犯罪で

二回分の終身刑を食らってここにいる。

ここ数年は敵対組織に命を狙われて懲罰房にいたらしいが、戻って来たのか。

まったく気は進まないが俺はベッドから起き上がり、俺は戦々恐々パシリの後をついてゆく。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「俺に何の用だ? 何にもしちゃいないぞ」

ミ,,゚Д゚彡「知らねえ。とにかく来い」


棟から運動場に出、隅っこの方のベンチに向かう。

奴はそこで取り巻きどもに囲まれ、ゴッドファーザーよろしくふんぞり返っていた。

  _
( ゚∀゚)「まあ楽にしろ。取って食やしねえ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「そうかい」


座るよう進まれ、隣に腰を下ろす。



 
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:22:06.79 ID:Fhcu/PQt0
22.
俺は表面上じゃ平然とした顔でいたつもりだが、内心は心臓が凍り付きそうだ。

ジョルジュは所内で組織の裏切り者の首を切り落としてトイレに捨てるという事件を起こしている。

公式には犯人不明で未解決の事件ということになっているが、まあ公然の秘密ってヤツだ。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「早いとこ用件を済ませて欲しいもんだな」
  _
( ゚∀゚)「落ち着けって。コーラ飲むか?」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「糖分は控えてる」
  _
( ゚∀゚)「そうか。実は用ってのはな、お前がシャバでしたことについてだ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「何だ?」
  _
( ゚∀゚)「トボケるな。タタキ(強盗)だよ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「……」


ジョルジュの取り巻きどもは何気ないふうを装いながら周囲を警戒し、看守や余計な囚人がこっちに

近付いて来ないか気を配っている。

ここは即席の会議室ってわけだ。

 
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:24:08.57 ID:Fhcu/PQt0
23.
  _
( ゚∀゚)「いいか、お前が叩いた町は俺の縄張りだった。

    そこで起きた事ならかっぱらいから野グソまで何でも俺の耳に入って来る。

    誰がやったかもだ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「……」
  _
( ゚∀゚)「ところが俺はお前とは初対面だし、ちょっと前まで名前すら知らなかった。

    お前は四件成功させてたな。それだけ腕のいい奴のことを、何故俺は知らなかった?」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「悪党は前置きが長いってのは映画じゃお約束だが……」
  _
( ゚∀゚)「わかってる、わかってるって。回りくどいとも。

    だが本題に入る前に、こいつは是非とも話しておきたい大事なことなんだよ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「……」
  _
( ゚∀゚)「重要なのはな、お前が俺の町で勝手に仕事したって事さ。

    この俺に挨拶なしでだ。わかるか?」


最高にヤバイ風向きだ。

 
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:26:13.43 ID:Fhcu/PQt0
24.
.∧_∧
( ´_ゝ`)「カネを払えってのか?」
  _
( ゚∀゚)「おいおい、今更そんなこと言わねえよ。俺だってそこまで狭量じゃねえ。

    だいたいムショでそんなにカネ持っててどうすんだ?

    毎日アイスクリームサンドとチョコバーを100個ずつ食うのか?」


わからないな。こいつの目的は何だ?

ジョルジュは煙草を取り出して火を付けた。

  _
( ゚∀゚)「だがシャバの俺の組織が今ちょっとマズくてね……部下が無能なんだ。

    俺なしじゃ何にもできねえ。資金難で破産寸前だ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「意外に思うかも知れないが、俺は……」
  _
( ゚∀゚)「カネは持ってねえって言いたいんだろ。

    お前の裁判記録をちょいと調べたが、確かに銀行口座もスッカラカンだったそうだな。

    お前の釈明は傑作だったぜ、『カネなら犬が食っちまった』だろ?」

 
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:28:04.79 ID:Fhcu/PQt0
25.
  _
( ゚∀゚)「検察は血眼で隠し口座や金庫を探し回ったが、結局盗んだ現金がどこに消えたか

     わかんねえまま裁判は終わり、お前は終身刑を食らった」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「……」
  _
( ゚∀゚)「なあ、銀行や輸送車を四回も叩いたんだぜ。まあ五回目は捕まって押収されちまったけど。

    一億は下らないカネを手に入れた筈だろ。お前んちの犬は恐竜みたいにデカイのか?」


奴は俺の方を見た。

筋金入りの無法の者の眼だ。欲望でギラギラしてる。

  _
( ゚∀゚)「教えてくれよ。どっかに隠したんだろ? 誰も知らない場所に」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「……」
  _
( ゚∀゚)「話ってのはそんだけさ。もう行ってもいいぜ」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「そうか。じゃ、失礼しよう」


 
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:30:18.56 ID:Fhcu/PQt0
26.
俺がベンチから離れかけると、奴はぼそりと呟いた。

  _
( ゚∀゚)「家族がいるんだろ?」
.∧_∧
( ´_ゝ`)


俺は振り向いた。奴はニヤついている。

頭ん中で爆竹が炸裂した。

.∧_∧
( ´_ゝ`)「てめえ、もし家族に手を出したら……!!」


取り巻きに押さえつけられても、俺にはジョルジュしか見えていなかった。

  _
( ゚∀゚)「聞いただけだ。そんなにキレるな」
.∧_∧
( ´_ゝ`)「殺すぞ、どんな方法を使ってもてめえを殺す!!」
  _
( ゚∀゚)「じゃあな、兄者。また会おうぜ」




 
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:32:20.71 ID:Fhcu/PQt0
27.
翌日は作業に没頭して頭の中から不安を振り払おうとしたが、うまくいかなかった。

自分の房に戻り、更に消灯時間が来ると、焦燥は手が付けられないほどに大きくなっていた。

 ∧_∧
( ´_ゝ`)「誰かが死ぬ……? カーチャン、クー、ヒート、シュー……」


ジョルジュの部下は、彼女たちをどう殺す気だ?

撃つのか? 刺すのか? 轢くのか?

 ∧_∧
( ´_ゝ`)「考えるな……そんなこと考えるな……」


俺は何もできない。

分厚い壁に隔たれたここからでは、誰も守れない。

 ∧_∧
( ´_ゝ`)「どうすればいい……どうすればいい……!?」


頭を抱えていると、房の外で足音が聞こえた。



 
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:34:09.43 ID:Fhcu/PQt0
28.
(‘_L’)「待たせたか?」
 ∧_∧
( ´_ゝ`)「……」


歩いた後に血の道を作りながら、フィレンクトがやってきた。

ドアの片側に少しだけある鉄格子に持たれかけ、ニヤつきながらこっちを見ている。


(‘_L’)「そりゃあ、お前は前よりはマシになった。

     少なくとも悪人ではなくなったな。そこは俺が太鼓判を押してやる。

     だがな、これから重要なことを言うぞ。いいか、すげえ大事なことだ」
 ∧_∧
( ´_ゝ`)「?」


俺は顔を上げる。

奴は更に笑みを濃くする。


(‘_L’)「お前が善人になりゃあ、過去の悪事が『なかったこと』になるのか?」

     被害者も奪ったカネも殺意も悪意も過ちも後悔も消えてなくなっちまうのか?」

 
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:36:35.34 ID:Fhcu/PQt0
29.
俺は頭の中のすべてをさらって言い返す言葉を探す。

でも何も見つからない。


(‘_L’)「これが証拠だよ。俺が生き返らないことが、何よりの証拠だよ」


フィレンクトは自分の額を人差し指と親指でほじくった。

ずぶずぶと湿った音がして、やがて奥から血塗れの潰れた弾丸が一つ出てきた。

 ∧_∧
( ´_ゝ`)「テメエは死んで当然の悪党だろうが!」

(‘_L’)「まあ自業自得な部分もあるかな。でも殺したのはお前だよ」
 ∧_∧
( ´_ゝ`)「……」

(‘_L’)「俺は悪い奴さ。おっしゃる通り死んで当然だよ。

     でも俺に銃を向けて眉間に狙いをつけて撃鉄を上げて引き金を引いたのはお前なんだよ。

     俺じゃあない」




 
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/06/30(月) 23:38:27.19 ID:Fhcu/PQt0
30.
ヤバイのはもう一つ、ジョルジュが事件のことを嗅ぎ回ることだ。

もしも俺の『雇い主』が明るみに出るような事があったら、そいつは俺を許さないだろう。


 ∧_∧
( ´_ゝ`)(もう娘や弟者と面会はダメだ……手紙もよした方がいい。

      だが俺は、それに耐えられるのか?)


今日まで正気を保てたのは家族との繋がりがあったからだ。

俺は頭を抱えてベッドにうずくまる。

もう何時間経ったかわからない。

朝は、まだ来ない。





#7はこれでおしまい。#8へ続く





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