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('A`)ドクオは勇者になったようです ‐10‐『死者VS生者』


1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:26:29.18 ID:ytkp2h9J0
まとめさま
ttp://naitoutekiseikatu.blog31.fc2.com/blog-entry-25.html

一応閲覧注意
投下する




2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:27:29.23 ID:ytkp2h9J0
 ―――機械と融合した身体を誇らしく思ったことは、
ただの一度だってありはしない。

 掃除をするのに、銃は必要ないからだ。

 花を植えるのに、無駄に頑丈な身体は必要ないからだ。

 侵入者を追い払うのも、箒一本あれば充分だからだ。

 だから、この身体に感謝したことは今の今まで一度もない。

(・∀ ・;)「っくそ、何なんだよお前!」

 そして、これから先も。


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:28:18.21 ID:ytkp2h9J0
('A`)ドクオは勇者になったようです
‐10‐『死者vs生者』


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:29:25.55 ID:ytkp2h9J0
 生者と死体の戦いが始まって数分が経つ。

 鈎爪を振るってクーを打ちのめすまたんきの表情には、
明らかな焦りの色が見てとれた。

僕らを相手にしていた時の余裕はどこにもなく、
焦ってがむしゃらに拳を振るうばかり。

その度にクーに反撃されて、
またんきの身体に蓄積される疲労やダメージは増えていく一方だと、見てて思う。

(・∀ ・;)「何なんだよお前っ!」

川 ゚ -゚)「言っただろう。杉浦家直属のメイドさんだ」

川 ゚ -゚)「そうそう。たった今から、勇者のパーティに加わったな」

(・∀ ・;)「畜生が! ナメやがって!」

 何度鈎爪で薙ぎ倒しても、残された左手で何度殴ろうとも、
攻撃を受けるクーの顔色は全く変わらない。

いつも通りの涼しい顔で、クーはまたんきの攻撃を適当にあしらっては、
隙を見付けて反撃する。

鈎爪と機械が拮抗する度、激しい火花が散った。
金属同士が引っ掻き合う、不快な音が何度も何度も廃棄街中に響き渡る。
またんきが殴り、クーが撃つ。


5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:31:02.75 ID:ytkp2h9J0
そう長引かない戦闘になるだろうとは思うけど、
何度かもろに攻撃を喰らってるクーは大丈夫なのか……?

(・∀ ・;)「くっそ!」

 体中に擦過傷や銃創を作りながら、
またんきはクーを殺す為に長い鈎爪と、左手を振り回す。

さすが一度死んだ身体だな……。
生身の身体じゃリスクが高すぎて繰り出せないような捨て身の攻撃も、
またんきはなんの躊躇もなしに繰り出す。

その度にクーにあしらわれてるけど、
それでも見てるこっちからしてみれば目を覆いたくなるような危なっかしい場面もあった。

川 ゚ -゚)「っ!」

 ぶうん、

空気を薙ぐ物凄い風切音と共に、鈎爪がクーの側頭部を掠めた。

いくら機械細胞を埋め込まれたとはいえ、
さすがのクーも『無敵』ではないらしい。

黒い髪の間から、一筋の血が流れた。

川 ゚ -゚)「……」

 煩わしそうに、流れてくる血を手で拭い、
クーは攻撃の手を止めて、またんきの方を見据える。


6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:32:36.61 ID:ytkp2h9J0
その隙にまたんきは瞬間移動装置でクーから離れた。

(・∀ ・;)「お前も死体か? 機械細胞植えられたのか?!」

 クーから離れた場所に移動したまたんきは、
長い鈎爪を一度器用に折り畳んで大声を上げる。

そんなまたんきを睥睨し、クーは面倒臭そうに答えた。

川 ゚ -゚)「貴様と一緒にするな。私は死んでない。
     生きたまま機械細胞を埋め込まれた」

(・∀ ・;)「生きたまま?! 冗談抜かせ!
     機械細胞と人間の細胞が結合するときの痛みはハンパねぇって魔王本人が言ってんだぜ!
     おめぇみてぇなアマがその痛みに耐えられる訳ねぇだろうが!」

川 ゚ -゚)「冗談だと思うならいちいち聞くな、めんどくさい」

 銃化していた左腕が、元に戻る。
一見すると丸腰だ。

こんな状況で武装解除するなんて正気じゃないぞ、大丈夫か……?

(・∀ ・#)「……! 馬鹿にしやがって!
      おめぇみてぇなスカした女は大ッ嫌いだ!」

川 ゚ -゚)「そうか、残念だ。私は貴様みたいな扱いやすい男は嫌いじゃないんだがな」

(・∀ ・#)「悪いがメイドにゃ興味はねぇ! 俺は女教師派だ!!」


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:34:55.26 ID:ytkp2h9J0
頭に血が上ったまたんきが、
自分のフェチを暴露して一直線にクーに向かって走る。

鈎爪を振り翳し、戦闘の素人から見てもそれはまずいだろうと思うくらい、
馬鹿正直にクーの真っ正面へ。

(・∀ ・)「おらぁあぁああぁあああぁ!!!」

 またんきは歓喜に満ちた雄叫びを上げて、
それに従うように鈎爪はクーの首へと物凄い速さで伸びた。

あんなものが首に直撃したら、
機械細胞と結ばれたクーも絶対にただじゃ済まないぞ!

(;'A`)「クー、逃げ 川 ゚ー゚)「―――だから私は貴様が嫌いじゃないと言ったんだ」

 馬鹿正直な攻撃を見て、クーは嬉しそうに微笑んだ。

(;'A`)「クー!! 逃げろって!!」

(;・∀・)「危ない!!」

 安全圏でその戦いを見守っていた僕は、
思わず最悪の事態を想像してクーに向かって叫ぶ。

―――逃げろ、逃げろってば!!

でも、クーは一切その場から動く事なく、またんきの接近を許した。


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:36:53.99 ID:ytkp2h9J0
攻撃してくる様子が皆無だと判断したらしいまたんきが、
満面の笑みを浮かべてクーの懐へ飛び込む。

クーは武装解除した状態で、
自分に向かって来るまたんきをギリギリまで待っていた。

―――固く閉じられていた口を、顎が外れんばかりに目一杯開けて。

(・∀ ・;)「?! しまっ―――」

 大きく開かれたクーの口を見たまたんきは、
冷静さを欠いてがむしゃらに鈎爪を振るう。

だけどそれより早く、

川 ゚ -゚)「燃えろ!」

 クーの口からは、真っ赤に燃える炎が迸っていた。

( ∀  ;)「あっがぁあああぁあああ!!!!」

 炎はクーの真っ正面にいたまたんきの上半身を覆い、皮膚や肉を灼く。
情け容赦のない炎攻撃だ。

炎に踊らされ、またんきは絶叫しながら体中に纏わり付く火を消そうと足掻いていた。

その様子をクーは冷ややかに見つめながら、
再び銃化させた左腕をまたんきに向ける。


9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:39:22.04 ID:ytkp2h9J0
川 ゚ -゚)

( ∀  ;)「くっそがぁあぁああぁあっ!!!!
      このアマがっ!! ふっざけんじゃねぇええぇ!!!」

 燻り、焦げた身体を無理矢理動かし、
またんきは怒号と共に、残された左手でクーの頬を狙う。
その足元は覚束ず。

体重も乗っていないその場しのぎの攻撃なんかが、クーに届く訳がない。
クーはまたんきの拳を難無くかわし、銃化させた左手でその拳を撃ち抜いた。

完全に、またんきはクーに弄ばれている。
あいつに殺されかけたとはいえ、段々と哀れに思えて来た。

( ∀  ;)「あああああああっっ!!!!」

 撃ち抜かれてズタズタになった拳を震わせ、またんきはその場に崩れ落ちる。

どこからどう見ても、この状況からまたんきがクーに勝てるようには思えない。

体中から肉が焦げた臭いを立ち昇らせ、右腕はモララーによって奪われ、
残された左手は銃弾の集中砲火を受けてボロボロだ。

その肉体は死んでるとはいえ、かなり凄惨な光景だった。

全く攻撃を受けてない僕の手も痛むような錯覚を覚えるほど、
またんきの状態は最悪だ。

( ∀  ;)「ぐ……ぅう……」


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:41:42.08 ID:ytkp2h9J0
川 ゚ -゚)「馬鹿正直に私に突っ込んで来たのが悪かったな。
     落ち着いて、瞬間移動装置とやらでゆっくりと近付いて来れば―――」

 黒い煙を上げながら蹲るまたんきの近くで、クーは口元を吊り上げて笑った。

川 ゚ー゚)「――いや、それでも無理だったかな」

( ∀  ;)「っが……」

( ∀  ;)「クソがぁああぁあああぁ!!」

 最後の力を振り絞ったのか、
またんきの側に力無く倒れていた鈎爪が怒号と共にクーの急所目掛けて伸びた。

呆れたような表情で、クーはひらりとその鈎爪を避けてみせる。

その様子を見ていたまたんきは、
焦げた顔を楽しげに歪めた。

( ∀  ;)「へっ、引っ掛かったな!」

川 ゚ -゚)「!」

 鈎爪の一本は、間違いなくクーに向かっている。
もう一本の鈎爪は、

(;'A`)そ

またんきの攻撃範囲外であったはずの僕の方に伸びていた。


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:44:12.67 ID:ytkp2h9J0
所々欠けて焦げた鈎爪だとしても、
人の身体を貫くくらいの強度はまだありそうだ。

あぁ、絶体絶命という言葉をこんな短い間に何度も経験するとは夢にも思わなかった!

( ∀  )「うひゃあひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

( ∀  )「死ね勇者ぁああぁああぁあああ!!!」

(;'A`)

 真っ直ぐまっすぐ伸びる鈎爪を見ていたモララーが、避けろと叫ぶ。
僕の視線の片隅では、倒れたままのまたんきに左手を向けるクーの姿があった。

全ての動きがスローモーションのように感じる。
走馬灯を流す為に、神って奴から与えられた時間なのか。

じゃあ、僕死ぬじゃんか……!

(;'A`)

(;・∀・)

川 ゚ -゚)

( ∀  )


12 :>>11×それ ○じゃあ:2010/06/01(火) 23:46:02.69 ID:ytkp2h9J0
 ―――ずどん

何とも鈍く、重い音と共に、
すぐそこまで伸びていた鈎爪は僕の前で力無く落ちた。

クーの左手からは、白い煙がゆらゆらと揺らめいている。
その銃口は、またんきの頭に向かっていた。

また、助けられたのか……。
もうクーには頭が上がらないな……。

川 ゚ -゚)「―――私の勝ちだ」

 無表情のまま言い放ち、クーは僕らに視線を向けた。

川 ゚ -゚)「二人とも大丈夫か?
     もう少し早く来れば良かったな。すまない」

(;'A`)「あ、いや、充分だよ……。僕らだけじゃ、やられてた」

(;・∀・)「お強いですね」

川 ゚ -゚)「メイドだからな」

 銃化していた腕を戻しながら、
クーは傷の深いモララーの様子を調べる。

そこから少し離れたところには、
俯せのまま微動だにしないまたんきの死体があった。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:50:23.02 ID:ytkp2h9J0
クーが来てくれなかったら、本当に僕らは殺されてただろうな……。

本当に僕は運が良いと思うよ。
最初はモララーに助けられて、たった今、クーに助けられて。

('A`)「……」

 ……あれ?

(;'A`)「……」

 少し離れた場所には、焦げたまたんきの死体がある。
それを見て安心する反面で、記憶の片隅に何かが引っ掛かった。

(;'A`)「……?」

 なんだ?
……なんだったっけ……確か死体に関する話だったと思うけど……。

(;・∀・)「あだだだだだ!! もっとソフトに頼むよ!」

川 ゚ -゚)「これ以上無いほどソフトだろう」

……そうだ、思い出した!

少し前に3112番の勇者が死んだのを見届けた時に、
モララーが言ってたんだ!

―――『ラウンジでは、死んだら粒子になって消えるんだよ』―――


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:52:21.08 ID:ytkp2h9J0
あの話から考えれば、死体は消えるはずだ……。
でも、またんきの体は消えないまま残っている。

……ということは……

('A`)「死んで、……ない?」

 普通なら、頭を撃ち抜かれたら大体の人は死ぬ。

でも、一度死んだ人間を生き返らせて強化改造したなら……。
死んでないという可能性も、かなり高いんじゃないのか!?

( ・∀・)「ドクオ、どうかした?」

(;'A`)「またんきさ、死んだのかな?」

(;'A`)「粒子になっていかないんだけど」

 僕の言葉に、モララーとクーがまたんきに視線を向ける。

どこからどう見ても死んでるように見える身体だ。
だから、さっきは生きてるなんて思いもしなかった。

('A`)「あ」

横たわるまたんきの左手には、
さっきまで無かったはずの細長い缶のようなものが握られていた。




16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:57:13.45 ID:ytkp2h9J0
あれは……手榴弾!?
またんきの奴、自爆する気か!?

まずい、ここにいたら巻き込まれ―――

( ∀  )「あははははははははは!!!
     そうだなぁ、今回は俺の負けだ!」

 ピンが外れた手榴弾は笑うまたんきの手を離れた瞬間に爆発し、
強烈な光を生み出した。

川;つ - )「!」

(; ∀ )「うわあああああ!」

(;'A`)「眩し……!!」

閃光手榴弾とかそんな類のやつか……!
くそ、眩しい……!

(;つA`)「……」

 ……光が弱まって消えた後も、
しばらくの間は目がチカチカして瞼を開けることが出来なかった。

ようやく視力が回復した時には、もう既にまたんきの身体はどこにもなく、
クーが頻りに悔しがって悪態をついていた。

川 ゚ -゚)「くそ、トドメを刺せなかった。……あいつ、頭撃ち抜いても生きてられるのか……。
     化け物だな、私もあいつも」


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:58:26.93 ID:atLr+hxc0
きたああああああああああああああ!


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/01(火) 23:59:59.26 ID:ytkp2h9J0
(;'A`)「……」

生き死に関係なく、肉体に改造手術を施す現魔王、ワカッテマス……。

勇者を攫って、一体何が目的なんだよ……。
機械細胞なんてものを人に埋め込んで、何がしたいんだ?

不気味なほど、ワカッテマスの目的が分からない。

川 ゚ -゚)「ドクオ、戻るぞ。一度城に戻って、怪我の手当てをしよう」

 片手に微妙な表情のモララーを抱え、クーが僕を呼んだ。
お姫様抱っこの次は、小脇に抱えられるって……。

しばらくは、モララーをからかうネタになりそうだな。

**********
**********

 場所は変わり、ここはドクオの出身地、VIP国。
そのC地区にある、産婦人科病院だ。

その家族は幸せの真っ只中にいた。


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:01:16.46 ID:GVYZZU/10
爪*゚ー゚)「可愛いなぁ~」

ノリ,*^ー^)1i「可愛いでしょ。お母さん頑張ったからね。
      じぃ、この子の名前は何にするの?」

 新しい家族が増え、家族はもちろんのこと、
赤ん坊を取り上げた医師や、看護婦でさえ、彼らを祝福してくれていたのだ。

じぃ、と呼ばれた少年は、初めて会った妹を優しく抱きしめて、
ベッドに横たわる母を見上げる。

爪*゚ー゚)「名前はもう決めたんだ! この子の名前は、づー!」

ノリ, ^ー^)1i「あら、いい名前ね。お母さんも、づーに賛成!」

 おどけたように賛同して、じぃの母は息子の頭を優しく撫でた。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:02:30.45 ID:GVYZZU/10
*****
*****

 同時刻。

D地区にある鬱之宮家では、
ドクオの安否を心配するメイドロボットが忙しなく家事をこなしていた。

メイ ゚⊿゚)「ドクオ様は大丈夫なのでしょうか……」

 掃除機を手に、部屋中を歩き回るメイドロボット。
彼女は、主人がいなくなっても毎日掃除を欠かさなかった。

自分の過失で空っぽになってしまった箪笥も、
ずいぶんと枚数が減った食器棚の中の食器も、細かい場所まで隅々に磨きあげる。

彼女がドジをやらかすことは極端に減ったが、
たまに割ってしまった皿を手にしては、困った顔で笑う主人の顔を思い出していた。

メイ ゚⊿゚)「もしもこのままドクオ様が帰って来なかったら……」

メイ ゚⊿゚)「……。いえ、約束しました。だから、帰って来ますよね、絶対に」

 自分の言葉を打ち消し、メイドロボットは掃除機を動かす手を止めて、
リビングのパソコンを見た。

そこは、いつもドクオが座っていた場所だ。


21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:03:55.66 ID:ytkp2h9J0
メイ ゚⊿゚)「……絶対に……」

 ぽつりと呟いた言葉。

そして、不安をかき消すかのように動かした掃除機は、
床に置いてあったグラスを倒して割る。

実に2日振りのドジだ。
慌ててメイドロボットは掃除機を止めて、コップの破片を拾い始めた。

*****
*****


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:05:26.84 ID:ytkp2h9J0
さらに同時刻。

VIPの中でも治安が最も悪いと言われるS地区の片隅にある家では、
長い金髪の女が窓辺に佇んでいた。

|゚ノ ^∀^)「……」

 彼女は、もう随分帰らない恋人の帰りをずっと待ち侘びているのである。

|゚ノ ^∀^)「……」

 ひとりでいるには些か広すぎる部屋に、外からの銃声が響く。
特に珍しい話ではなく、S地区では銃声が鳴らない日はないとさえ言われている。

だから彼女も別段驚いた様子を見せずに、
帰らぬ恋人の姿を捜して毎日窓の外を眺めているのだ。

気付けば、もう恋人が帰らなくなって10年以上が経過していた。

|゚ノ  ∀ )「……待ってるよ、私はずっとここで、待ってる」

 彼女は、掠れた声で呟いた。

*****
*****


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:07:21.91 ID:GVYZZU/10
 ―――それは、本当に突然のこと。

息子の頭を撫でる腕が弾け飛び、
彼の母は、突然短くなった腕を見て首を傾げた。

ノリ,;^ー^)1i「え……」

爪;゚д゚)「お母さん! 腕が!!」

 知覚するにつれ、脳内麻薬が切れて激痛が戻って来る。

じぃの母は、短くなった腕を庇って悲鳴を上げながら、
ベッドから転がり落ちた。

―――何が、いきなり何が起きた?!

じぃの悲鳴を聞き、赤ん坊が激しくぐずりだす。

その声を聞いたのは、赤ん坊の母と、
突然、何の前触れもなく病室に現れ、彼女の手をもいだ異形の化け物。

ノリ,;^ー^)1i「じぃ、逃げ―――看護婦さん達―――」

 とぎれとぎれの言葉を紡ぎ、じぃの母は部屋の出入口を指差す。
大きな体を持つ化け物は、恐怖で動けないじぃに向かってゆっくりと歩きだしていた。

部屋にいた看護婦達は大体が逃げ出したか、
突然現れた化け物に殺されてしまったらしい。



24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:10:32.25 ID:GVYZZU/10
激痛の為に浅くなる息を吐き、彼女は渾身の力を振り絞って、
そこらに落ちていたものを手当たり次第に化け物に放る。

化け物の沢山の眼が、じぃの母に向けられた。

爪;゚д゚)「母さっ……!!」

ノリ,;^ー^)1i「大丈夫よ。だから、逃げろ、お兄ちゃん」

 狙いを変えたらしい化け物がじぃの母に近付いた。

その身体からめきめきと生まれた鋭利な爪が、

爪;゚д゚)「……!」

微笑むじぃの母の胴体と首をいとも簡単に切り離す。

高く撥ね飛んだ母の首が、恐怖で失禁してしまったじぃの足元に転がった。

爪;゚д゚)「あっあああっあああああああ」

足元に転がる母の首。
こちらに近付く、母を殺した異形の化け物。

じぃは弾かれたように、泣き叫ぶ赤ん坊を抱いたまま部屋から転がり出た。


25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:11:58.91 ID:cglVOgRL0
( ゚д゚ )ゴクリ


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:13:27.10 ID:GVYZZU/10
爪 ;д;)「ああああああああああっあっあああっ!!!」

しかし、病院の廊下も地獄絵図と化していた。

白を基調とした建物や壁には、
まるで模様のように飛び散った赤い血や細胞のかけらが。

床には、崩壊した看護婦や、腹を切り裂かれた妊婦の遺体が。
それらから流れた血で生まれた海には、

(`・ω・´)「……」

一人の青年が立っていた。

彼の右手には、剣。
ぶらりと垂れ下がった左手の甲には、『5347』と番号が。

じぃだって、その数字が何を意味するか位は知っていた。

爪 ;д;)「ゆ、ゆう……勇者……?」

(`・ω・´)「うん、勇者だよ」

青年は血の海を渡り、こちらに近付いて来る。

病棟の至る所から悲鳴や絶叫が聞こえ、
じぃの手の中にいる赤ん坊は泣き止まない。

じぃの抱えているおくるみを一瞥して、勇者は言った。


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:15:13.83 ID:cglVOgRL0
救世主きた!


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:15:21.96 ID:GVYZZU/10
(`・ω・´)「うるさいねぇ」

爪 ;д;)「っ!!」

 反射的にじぃは、赤ん坊を守るかのように抱きしめる。

(`・ω・´)「殺しちゃうぞ?」

 勇者は、右手の剣をじぃに向けた。

しゃくりすぎて満足に息も出来ない中、
じぃの頭の中はパニックをとうに通り越して、冷静さを取り戻しつつあった。

爪 ;д;)「うわあああああああっあああああああ!!」

とにかく、まだ生まれたばかりの妹を守らなくては。
彼の脳はそればかりを主張する。

じぃは泣き叫びながら、勇者から全速力で逃げる。

ちらりと振り返ると、勇者はぽつねんと突っ立ったまま、
ぼんやりとじぃを見つめていた。

*****
*****


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:17:16.43 ID:GVYZZU/10
 化け物の急襲を受けたVIP国。

じぃが泣きながら走り回っている頃、D地区では、
何かが外れたような表情の大量の勇者達が、民家を次々に襲っていた。

それは、鬱之宮家も例外ではなく。

メイ;゚⊿゚)「や、止めてください! ここは主人の、ドクオ様のお家です!
     破壊を止めてください!!」

 突然押しかけて来て、突然家の破壊をしまくる勇者達をなんとか止めようと、
おろおろとメイドロボットが叫んでいた。

メイ;゚⊿゚)「何故こんなことをなさるんですか! 止めてください!」

 懸命の願いは聞き入れられず、鬱之宮家の状態はひどくなっていく一方だ。

剣や銃を携えて、顔色ひとつ変えずにそこかしこを壊して回る勇者のうちの一人が、
ようやくメイドロボットに向き直った。

(  ゚∀゚ )「壊したいんだ」

 9903の番号を持つ勇者が、低い声で呟く。

(  ゚∀゚ )「なんか知らないけど、壊したいんだ。すっごく」

メイ;゚⊿゚)「こ、壊したい?」

(  ゚∀゚ )「家も、人も、何でもいい。壊したいんだ」


30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:19:27.72 ID:GVYZZU/10
 据わった目をして、その勇者はメイドロボットににじり寄る。
訳が分からずに、彼女はその勇者から逃げるように後退した。

自分の目の前にいる人間は間違いなく政府が仕立て上げた勇者で、
でもその勇者は、その名称から程遠い行動を嬉々としてやっている。

メイドロボットの思考回路は、勇者として消えた主人を思い出していた。

メイ;゚⊿゚)「まさか……ドクオ様もこんなことを……?」

 他の勇者たちが帰ってきたのなら、ドクオが戻って来ている可能性もある。
ならば、ドクオもどこかでこんな風に家や人を破壊して回っているんじゃ……?!

そこまで考え、メイドロボットは何度も首を振ってそれを否定した。

あの人がそんなことをする訳がない。
出来る訳がない。

メイ;゚⊿゚)「ドクオ様は、こんな事しないです。絶対に、しません」

(  ゚∀゚ )「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

 後退を続けるメイドロボットの背が、無残に剥がされた壁に当たる。

家庭用のロボットに、戦闘プログラムは組み込まれていない。
よって、身を守る術を彼女は持っていなかった。

突き付けられた銃を見て、メイドロボットは、諦めたように瞼を下ろした。


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:22:24.90 ID:GVYZZU/10
最後まで気掛かりなのは、へたれた主人の安否。
何度ドジをやらかしても怒らなかった、主人の生死。

メイドロボットは瞼を閉じたまま、笑った。

その無機質な額には、政府支給の銃が向けられている。

メイ ∀ )「どうですか……? 自分で言うのもなんですが、
     私、良いメイドロボットだったんじゃないでしょうか……」

*****
*****

 ―――ばんっ

一発の銃声に、女は肩を震わせた。

|゚ノ;^∀^)「なに!?」

 S地区では日常茶飯事である銃声が、
何故か家の中から聞こえた気がしたのだ。

彼女は、そっと窓辺から離れ、銃声が聞こえた場所へ移動する。

この家の中には、自分以外誰もいないはずだ。
だから、家の中から銃声なんかが聞こえていいはずがない。

そこらのチンピラが忍び込んで家を物色しているだけなら、
銃声が聞こえるのはおかしい。


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:25:46.19 ID:GVYZZU/10
|゚ノ ^∀^)「……」

 彼女は、テーブルの上に置いてある銃を手に取った。

足音を出来るだけ立てないように気をつけて、
リビングを出て2階に上がる。

銃声が聞こえた2階からは、
誰かが何かを漁っているような音が聞こえていた。

銃の安全装置を外し、彼女はそっと壁に身を寄せて、
音が漏れている部屋の扉を開く。

そこには、クローゼットを荒らす、見知らぬ男の後ろ姿があった。

|゚ノ ^∀^)「……」

 彼女は、何の迷いも見せずに銃口を男に向け、引き金を倒す。

銃弾は彼女の狙い通りに男の頭を貫き、
男は頭から色んなものを撒き散らしながら卒倒した。

|゚ノ ^∀^)「(ただの泥棒?)」

 首を傾げ、彼女は、たった今撃ち殺した男の側まで近づいた。

その傍らには、まだ熱を持っている銃が落ちている。
暴発でもしてしまったのか、その銃は壊れてしまっていた。

倒れている彼の顔に見覚えはない。




34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:28:55.63 ID:GVYZZU/10
彼女は、血で汚れてしまった床や壁を見て肩をすくめた。
その背後に忍び寄る気配にすら、気付かない。

|゚ノ;^∀^)「すぐに片付けな―――がっっ!!」

 気配に気づいた時には、もう遅かった。
後頭部に大きな衝撃を受け、彼女は顔面から倒れ込む。

痛む頭を抑え、手を離れた銃を拾い上げて、慌てて彼女は振り返った。

そこには、見たこともない化け物が物も言わずに立っている。

|゚ノ;^∀^)「な、……に?」

 なんと表現すればいいか分からないほど奇妙なフォルムに、
その身体からは、長さのまちまちな刃物のようなものが突き出ているのが見て取れる。

|゚ノ;^∀^)「なによ……これ……」

 銃を撃つことも忘れ、彼女は化け物の姿に怯えた。

|゚ノ;^∀^)「こんなの……どうやって……」

 逃げればいいの? 

と続くはずだった言葉は、外から聞こえた咆哮に掻き消された。

化け物から目を離さず、身体をそっと起こして、彼女は窓辺へと下がる。
視線を外に向ければ、そこには、にわかには信じ難い光景が広がっていた。


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:30:40.45 ID:GVYZZU/10
|゚ノ;^∀^)「……」

 今、彼女の目の前にいる化け物が、窓から見えるだけでも5体。
それらは逃げ惑う人間たちをくびり殺し、踏み付けている。

麻薬に汚染されている身体がそうそう軽やかに動く訳もなく、
彼女が顔を知っている無法者達は苦悶に顔を歪めながら、
化け物によって物言わぬ屍へと変えられていった。

|゚ノ;^∀^)「……そんな」

 愕然とその場にへたり込んでしまった彼女に、
室内にいた化け物がじりじりと距離を詰める。

彼女の頭を支配していたのは、理不尽な恐怖。

どうして?
こいつらは一体なに?
怖いよ、助けて

そして、優しかった恋人の姿が、彼女の脳裏を過った。

|゚ノ  ∀ )「……けて」

 腰が抜けて立てなくなった彼女の間近で、
化け物は腕を思い切り振りかぶる。

それを眺めながら、彼女は、


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:31:37.03 ID:GVYZZU/10
|゚ノ ;Д;)「―――助けてモララーくん!!」

 10年以上前に帰らなくなった、恋人の名を叫んだ。


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:32:32.92 ID:GVYZZU/10
('A`)ドクオは勇者になったようです
‐10‐『死者VS生者』おわり




38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:34:03.99 ID:GVYZZU/10
平日のこんな時間にしえんありがとうございました

何かあったらどうぞ


39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:34:08.95 ID:DkoaKvRb0



40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:44:48.90 ID:cglVOgRL0
乙乙乙
S地区は普段から治安悪いん?


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:49:21.82 ID:GVYZZU/10
>>40
普段から、治安めがっさ悪いと思う。


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:50:48.95 ID:cglVOgRL0
あ,ごめんもいっこ
VIPには亜人がいないんだと思ってたけどそうでもない?
地区によるとか?


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:57:30.76 ID:GVYZZU/10
>>42
亜人は、ラウンジだけ。
VIPにはいないです。


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/02(水) 00:59:07.44 ID:cglVOgRL0
おk㌧


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