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<_プー゚)フエクストプラズマンの憂鬱のようです #1「アンチクライスト! ジーザス・ファッキン!」


2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 00:43:57.05 ID:9sBITA0e0
 ヒーローとは格好良くてはならない。
困っている弱きを助け、邪知暴虐を働いて高笑いする強きを挫かねばならない。
相手が怪獣でも人型でも関係なく、その正義の力を存分に行使して、悪を蹴散らすのだ。

 多勢に無勢。一人の悪に五人の正義のヒーローが襲い掛かってもなんら問題はない。
一般人を苦しめる弱い悪なのだから、思い切り暴力を振るっても問題はない。
組織から支給された、莫大な金額をつぎ込まれて出来上がった新しい武器の性能を試すのもいいだろう。

 しかし、ちょっと待って欲しい。

 見てくれの良い、清潔感のあるほうが正義で、不格好で、醜い姿のほうが悪者。
そういった先入観とは、ただの偏見ではないだろうか?

 なまじ知能が発達しているから(あるいは幼い頃から見ている特撮番組での刷り込み)固定概念に縛られているのだ。
誰も本質なんて気にしていない。上辺だけの現実――自分たちが確認できるモノを全て信じきっているのだ。
市民たちは集団洗脳を幼い頃から現在に至るまで延々と受けているのだ。周囲を取り巻く全ても同じように。

 一体誰が、この世界観を崩すことができようか。


           『彼らは正義』

                  『彼らが正しい』

       『悪者が間違っている』

                   『なにをしようと! ヒーローが正義!』


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 00:47:27.76 ID:9sBITA0e0
 と、片方だけを見て、そちらに声援を送り、自分たちの睡眠・自由時間を削ってまで正義のヒーローに資金を援助する。
善良なる市民たちの奮闘によって、ヒーローたちの施設・機関に属する者の生活水準は大幅に上昇し、彼らの平均年収は千五百万円を超える。

 それでも余る金の使い道に困り、とりたてて必要でもない一戦闘隊員専用の機械を開発する。
それは変形、合体し、巨大ロボットとなり街の建築物を破壊しつくす。

 戦闘(というよりはヒーローたちが圧倒的に我々を蹂躙するだけなのだが)後に生じる、
壊れた街の瓦礫を文句一つ言わずに大衆は笑顔を浮かべて掃除するのだ。ここまで来るともはや狂気の沙汰である。

 こちらの事情も知らないで、彼らは我々を見つけると騒ぎ、脅え、逃げ出す。
そしてやってくるヒーロー。振るわれる正義の拳。蹴散らされる戦闘員。吹き飛ぶ我々。

 少しでいいんだ。話を聞いてくれないか。
そちらが少し我慢するだけで、ヒーローが妨害しなければ、ものの数か月で我々は去るのだ。
そろそろ軍事金も限界だ。非常にヤバいのだ。我々にだって生命はあり、餓死だってする!

 私の叫びは誰にも聞こえない。誰も聞こうともしない。

 金融機関からお金を借りようにも、彼らは我々を見ると皆逃げ出してしまう。
お金があれば、金銭不足から発生する空腹から、やむを得ず窃盗をすることもなくなるのだ。
上手くいかないストレスから発生する部下のストライキに頭を悩まされることもなくなるのだ。

 だから――少しだけ目を瞑ってくれないか? あわよくば、我々の軍団に協力してくれないか?

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 00:51:23.54 ID:9sBITA0e0
( ^ω^)「ジャアアアアアアアアアアアアアアッスティイイイイイイイイイイイィィィィッッッッッッス!!」

 私の目の前には、赤々と燃え盛る右拳を振りかぶった赤色のヒーロー。
その背後には、コンクリートの上に折り重なり倒れている、我が部下の戦闘員たち。

( ^ω^)「ストレイトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォッッッッッッ!!!」

<_フー )フ「ぐが――ッ!!」

 強力な右ストレートを顔面に受けて、私は物凄い勢いで吹き飛んだ。
背中が壁に勢いよく衝突し、そのまま私の体系に合わせた形にめり込む。
凄まじい量の埃が舞い上がり、立ち込める。煙に陽炎のように揺らめいた影が五つ映っていた。

  _                 ( ゚д゚ )
( ゚∀゚)                                (^ω^ )
    「全ての悪を纏めて殴り叩き潰す! 我ら正義のヴィッパーズ!!」
川 ゚ -゚)                                ζ(゚ー゚*ζ

                 バァ――z__ン



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 00:56:18.92 ID:9sBITA0e0
 ヒーローたちの声が、重なり響く。
目の前の景色が明瞭になったとき、赤、青、黄、緑、桃、それぞれの色を基調とした格好をした五人が並び、各々のポーズをとっていた。
いつも通りの見慣れた光景と、いつも通りの勝ち誇った声。いつも通りのAAのズレ。台詞を挟む形にしたかったのだ。

<_;プー゚)フ「覚えてろよ!」

 捨て台詞を吐いて、我々の少なくなってきた軍勢に呼び掛け、退散する。
ヒーローたちは我々を追わない。生かしておけば様々なことに活かせるからだ。様々! なんという便利だろうか。
我々に向けて憐憫の情を向ける彼らヒーローには当初激しい怒りに駆られていたが現在はありがたい、と思っている。

 その行為は私の誇りの深いところを刺激したが、そう思わないとやっていられない。それが大人になるということだ。
遠くから携帯電話の撮影機能を使いながら、興奮した顔をヒーローに向けている男二人女三人。
その高校生らしきものたちが差し出した色紙や服にサインをしているヒーローに憎悪と呪詛の言葉を呟き、恨み100%の視線で刺した。

 赤色が可愛い女子高校生の肩に手を乗せても、桃色が格好良い男子高校生を誘惑しても、
彼らは大衆の目線で見て正義だから許されるのだ。勝者の特権である。敗者は何も言えない。何も聞いてもらえない。

 我々が容姿端麗な者を使って同じ行動をとると、ヒーローに思い切り懲らしめられるというのに、なんということだ。
そして、「悪の奴らに騙された」と嘆く一般人をヒーローが慰めて、お持ち帰り、そのままごちそうさま。

 もはやどこから文句をつければ良いのかわからない。

 彼らは皆、盲目なのだ。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 00:57:12.55 ID:9sBITA0e0
          <_プー゚)フエクストプラズマンの憂鬱のようです


          #1「アンチクライスト・スーパースターズ」

            すべてが平等な世界など、どこにも存在はしないのだ。

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 01:02:17.62 ID:9sBITA0e0
 私も敗戦後いつも通り、体を霧にして基地へと移動する。
瞬間移動のように聞こえるかもしれないが実際は街中を移動しているのだ。
空気中に私という細胞の成分が含まれるため、かなりの神経を使う行動であった。

 何故疲れた体に鞭打ちそのような行動を取るのか? 答えは単純である。
負けてボロボロの私を見た一般大衆はどう思うだろうか?

 私は吸血鬼である。
血は苦くて吸えず、ガーリックトーストが大好きで、十字架を見ると現実に嘆いて祈りを捧げたくなるが、吸血鬼であった。
もちろん吸血鬼なので、全身真っ黒な服を着ていて、身長は二メートル近くあり、顔は青白いくせして目は血のように真っ赤だ。

 そりゃあ、もう、騒がれて再びどこからともなくヒーローがやってくるに決まっている。正義の拳はもう受けたくない。

 ちなみに、私は陽の光によって灰になったりしない。むしろ健康的な朝型人間である。
だが、究極生物というわけではなく、ヒーローより劣る程度の戦闘能力しかない。

(メ'A`)「エクスト様。エクスト様」

 傷ついた汎用型怪人ドクオが私に話しかける。

 彼ら末端の戦闘員は哀れみからか、戦闘能力の低さからか、一般人に見られても騒がれることはない。
怪人たるものそれでいいのか、と思うが、誇りか痛みか二者択一であるならば、私は迷いなく誇りを投げ捨てようと思う。痛みは害悪である。

 私は現在霧状なので返事ができない。
そんなことも想像できないほど彼らは低脳なのかと思うかもしれないが、そんなことはない。


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 01:07:48.85 ID:9sBITA0e0
(メ'A`)「アルバイトに行ってきます。アルバイトに行ってきます」

 全身黒いスーツで覆われている彼は四肢を持ち人型であるため、人間社会に溶け込むことは容易であった。
私は意識を彼へと向ける間もなくドクオはアルバイト先のスーパーへと走っていった。

 ここで私は現状を確認する。
人型怪人が残り二人。彼らはうつろな表情をしている。猛獣型怪人(うさぎに似ている)が一匹。
以上である。

 もちろん、これが全勢力というわけではない。
だが、それにしても随分と数が減ったものだ。ため息を吐き出したい気持ちをグッとこらえる。

 我々がヒーローに駆逐されるのは周知の事実だが、戦闘後の怪人がどこにいくかは知られていない。
ヒーロー組織の人間は我々を殺すことはしない。様々な事情があるとは先述した通りだ。
ならば、なぜ私たち悪の組織の分母が減少していくのか? これもやはり答えは簡単であった。

 やるせない。むくわれない。どうしようもない。

 悪夢の3NOである。我々の物語は運命を打破できないのだ。
僕らはできる子とどれだけ叫ぼうが、現在の仕事は基本的に週に一度ヒーローに殴り飛ばされるだけだ。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 01:12:25.25 ID:9sBITA0e0
 子供でもできる本当に簡単な仕事である。
だが倫理観から誰も本気で子供を殴りはしない。

 ただし悪を除いて、である。
いくら悪人とはいえ子供を殴り飛ばすことなどないだろうと思っている方々は考えを改めるべきだ。
彼らヒーローは老若男女全ての人々に平等に正義の拳を振りかざし、打ち下ろす。滅茶苦茶である。

 ここに、一人の子供がいる。

ミ,,゚Д゚彡

 汎用人型怪人の一人であるフサギコ君だ。彼は今年で十七になる。
人間で言えばヒーローを見かけて興奮したり、異性の下着を盗んで興奮したりする年頃である。
なかなかに端正な顔立ちをしていて、人気がでることは火を見るより明らかだ。


 しかしながら、彼は物凄く毛深いのだ。


 全身が毛で覆われているといっても過言ではなく、尋常の発毛レベルではない。
【発毛】のパラメータが上限値まで成長しているのではないかと私は常々疑っている。
彼が痩身ではなく巨躯であったら間違いなく熊と間違われていたであろう。もしくはオランウータンだ。

 彼の薔薇色であったはずの人生を真っ黒にしてしまったのは、誰か。責任は誰にある?

 どうにもならない、状況というものは、どこにでも存在するのだ。

 神は既に死んでいて我々に慈悲など与えるはずもない。今の神はヒーロー機関のものたちなのである。


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 01:15:30.31 ID:9sBITA0e0
 基地に到着した。我々のアジトはアパートであった。
六畳と四畳半の二間の敷地が寝床であり作戦会議場であるのだ。

<_プー゚)フ「それじゃあ、また明日」

ミ,,゚Д゚彡「お疲れ様でした」

( ∵)

 フサギコ君の声とボウリング球の視線を背中に受けながら私は部屋の鍵を探すべくポケットを探った。
フサギコ君とボウリング球とドクオの部屋は、私の部屋の隣である。私の部屋番号は104、彼らは105だ。
間取りは同じである。何、彼らは三人と一匹なのだ。だがしかし彼ら全員が私と同じ権限を持つというわけではない。

 彼ら二名は扉を開けて部屋へと消えていった。
明日もきっと不毛な戦争が待っているのである。大変だ。怪人長たる私が体調管理なども気を回してやらねばならない。

 カレーでも作っておすそわけしてあげよう。

<_プー゚)フ「ん?」

 おかしい、いくらたっても鍵が見つからないのである。
嗚呼、落とした。一般大衆ならここで絶望感に襲われるのであろうが、我々は悪の組織だ。
配下にいる猛獣型怪人が形状記憶生物であるため、ここのキーになってもらえば何の問題もない。

 我ながら自らの技術力に驚愕するばかりである。
フサギコ君の部屋のインターフォンを押す。先ほど別れたばかりなので少々の罪悪感。


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 01:19:06.43 ID:9sBITA0e0
ミ,,゚Д゚彡「どうしました? エクスト様」

<_プー゚)フ「大変申し訳ないのだけれど、猛獣型怪人を渡してほしい」

ミ,,゚Д゚彡「飼いたくなったんですか? エクスト様、世話を嫌がっていたじゃありませんか」

<_プー゚)フ「いや、そうじゃないんだ。ヒーローたちとの戦闘中に、鍵を落としてしまったみたいなんだ」

ミ,,゚Д゚彡「あちゃー……普通にポケットに入れてたら、そりゃあ落としますよ」

<_プー゚)フ「申し訳ない」

ミ,,゚Д゚彡「この間のウエストポーチ、どうしたんですか?」

<_プー゚)フ「ジャスティスレッドに馬鹿にされたから、家の小物入れになっている」

ミ,,゚Д゚彡「……あ、と、とりあえず、渡しますね」

 そこでフサギコ君は振り返ってボウリング球になにやら声をかけた。
ボウリング球がしゃべったのを私は聞いたことがない。フサギコ君はあるのだろうか? 長として失格である。

ミ,,゚Д゚彡「エクスト様。猛獣型怪人、帰ってきてないみたいです」

<_プー゚)フ「は?」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 01:22:09.71 ID:9sBITA0e0
ミ,,゚Д゚彡「いや、あの、ですから、はぐれたみたいで」

<_プー゚)フ「……」

ミ,,゚Д゚彡「捜索に行きましょうか?」

<_プー゚)フ「いや、もう午後五時は回っているだろう? 定時だ。君たちはもう休んでくれ」

ミ,,゚Д゚彡「いやしかしですね……」

<_プー゚)フ「ヒーローだって、十七時以降の活動はしない。だから、退治はされないよ」

 こうして私は再び街へと繰り出した。
どんどんと夕陽が沈んでいく中、戦闘場所からゴミ捨て場まで奔走したが一向に見つからない。

 もしかしたら退治されてしまったのかも知れない。
形状記憶の便利な猛獣型怪人は様々な用途がある。一般人でも使用できる簡単な怪人なのだ。
犯罪にでも使われるとどうなってしまうだろうか。脳裏にヒーローに殴り飛ばされる私が浮かぶ。吹き飛ぶ戦闘員。

 『やっぱり悪の組織だ! きっとあの動物で泥棒をする気だったんだぜ!! なんてものを作るんだ!』

 私は途方にくれるほかなかった。
どうしようもない! 思わず泣いてしまいそうであった。


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 01:25:35.39 ID:9sBITA0e0
(*゚ー゚)「あのー……?」

<_プー゚)フ「なんですか?」

 可憐な乙女が目尻に涙を浮かべた私に話しかけてきた。なんという僥倖であろうか! と浮かれる私ではない。
ヒーローたちの手先であるかもしれないのだ。我々のアジトを襲撃し、一網打尽にする気かもしれぬ。

(*゚ー゚)「これなんですけど」

<_プー゚)フ「なんと!」

 彼女は猛獣型怪人を、す、と私に見せた。
胸に抱えられた猛獣型怪人はひょこりと顔を出している。

<_プー゚)フ「どうして、これを?」

(*゚ー゚)「先ほどかわいいなあ、と拾ったんです。そして、餌をあげていたら貴方が走っているのが見えまして」

 彼女は猛獣型怪人を撫でた。羨ましい。

(*゚ー゚)「するとこのこが、貴方目掛けてキィキィ鳴くものですから」

<_プー゚)フ「ああ、ありがとう。本当にありがとう」

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 01:27:12.33 ID:9sBITA0e0
 午後二十時のことであった。
私はなんとか自宅の鍵を手に入れたのだ。

 乙女に礼を告げて私は帰路についた。季節は夏。体中汗だくである。

 このような不毛な日々がいつまでも続くだろうか?
早く現状をなんとかしたいものだ。猛獣型怪人を腕にしっかりと抱く。

<_プー゚)フ「明日はどうなるだろうか」

 願わくば、ヒーローを含めた一般大衆が私たちの意見を聞いてくれる日でありますように。


 #1 「アンチクライスト・スーパースターズ」 終わり


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