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<_プー゚)フエクストプラズマンの憂鬱のようです #7「神様のメモ帳」


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 00:22:03.52 ID:rJ8YkPoV0 [2/32]
・ごきげんよう。おひさしぶり。

・前話まで。
・ななばつさん
・内藤的生活さん にてまとめられています

・前までの話は短く、今回の話は少し長いので投下の合間に読んでみてね。


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 00:27:26.06 ID:rJ8YkPoV0 [3/32]

 私は友達が少ない。

学生時代から感じていたことだったが、大学生のみんなは私を受け入れてくれた。
元々の性格上、友人が出来辛いことは理解していたし、無理に受け入れて貰おうとも思わなかった。そんな私をだ。
一度恵まれてしまうと前の境遇に戻るとより悲惨に感じてしまう。そのため、心細さを抱えて私は関東へと出てきた。

 妹と一緒に過ごしている充足感が私の推進剤となり、慣れない笑顔を振りまくことができた。
そのおかげで就職できたことから、妹が私を押し上げてくれたのだ。妹も私を慕ってくれている。
人生はもはや、レールの上を円滑に動き始めた。

 仕事について話そうと思う。

ヒーロー戦隊において私はジャスティスブルーを担当しており、青色の衣装を着て戦いへと赴いている。
扱っている刀の刃が脚の長さほどもあり、やはり、透明感を持った薄い青色をしていた。
さらに同様に管理する機体も青色だ。ちなみに、合体後の私の担当は右腕だった。

一見、重量トラックにも見えるこの機体は私が乗り込んで少し操作を行うと、
後はオートマティックに機体が動き目の前に向けて弾丸を掃射する。

吹き飛ぶ建造物。死屍累々と化した繁華街。死に絶える怪人。
流れ弾や瓦礫の飛散により怪我をする一般人も少なくはない。しかしながら一般大衆は己の街を蹂躙されたにも関わらず、皆笑顔だ。

内装は一見質素であったが最高級の素材を使われており、音楽機器なども壁にとりつけられていた。
防音性にも優れており、ガラスや壁一枚隔てた向こうでは爆発がおきたりしているのに、私たちは戦闘中にクラシック音楽を聞いている。
乗り物酔いしないように訓練されているので、機体の中で活字を読んだり、予定に入っているデパート・ショーの振り付けを練習している。

私たちが自発的に行うことなんて、予想外の出来事が起きない限りない。
派手さを演出するため、頭部へと成りえる機体(ジャスティスレッド)から変形・合体の合図が送られてくると、
私たちはハンドル横についた青色(私の場合は青。各々に振り分けられた色なのだろう)のボタンを押す。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 00:31:40.06 ID:rJ8YkPoV0 [4/32]

そうして揺れに備える。

すると、超金属だかなんだかよくわからないが、とりあえず物凄い技術を使用した私たちのマシンが凄まじい快音を響かせて合体する。
赤、青、黄、緑、桃。全てが合体する。
そうやって組みあがった機体が子供と一部の大人に大人気であるジャスティスカイザーだ。

合体中の動作が中々に辛い。縦横無尽に荒れ狂う機体の中に私はしがみついているのだ。体の中を血液が東奔西走する。
眩暈から醒める頃にはもう、全ての物事が落着している。機体五つ。単純計算で五倍の惨状。さらに合体パワーで大企業の玄関口を粉砕。
経済に大打撃ではないのだろうか。なんて思うけれどそのことについて言及され問題になったことはない。一体どうなっているのだろう。

 私たちのような戦隊は協会内にいくつもあり、戦隊の隊員一人一人が固有の武具を持っている。
しかし、巨大ロボットは私の属する関東支部には二つしかない。そんな訳でその二つを私たち戦隊でローテーションするのである。

「今日は巨大ロボAはAチームが扱います。なので、Aチームの方頑張ってください」

そうしてBチームは怪人蔓延る我が身一つで街のパトロールに出かけるか、施設内で鍛錬に励むかと迫られる。
ほとんどが後者を選んだ。理由は簡単で、巨大ロボットの巻き添えを食らいたくない一心からだった。
戦闘が終わると搭乗者はもはや破壊を楽しんでいるとしか思えない表情で、施設へと帰還してくる。

戦闘中に自分を一般人に売り込み、女学生を手篭めにして、助けた企業から袖の下を受け取る。
選ばれたという自覚から舞い上がり、特撮番組のように大袈裟なモーションをとって必要以上の破壊を生み出す。
そんな中私はただ一人支給された武具を使わず素手で怪人たちを気絶させていた。誰もが私を非難した。

しかし私はほとんど全てにおける数字で高水準を記録している。
それでもやはり、学生時代に感じた不安が消えることはなかった。いつどこで劣等のレッテルを貼られるかわからない。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 00:35:54.58 ID:rJ8YkPoV0 [5/32]

 当然ながら――そんな私に会話する同期はおらず、
共に支えあい訓練に励む同僚は必要なく、嫉妬と憐憫の入り混じった視線を受けることとなった。

 そんな日常が嫌で、私は訓練をサボりがちになっていった。妹の推進剤の効力はもう失われてしまったのだ。

 かつてはスカウトされ、実技試験・研修期間と共に驚異的な数字を叩き出した私であったけど、いまや新人グループの一人となった。
同隊員には素性を隠し、(私が言わないでも協会が手を回していた)同期として一緒に戦っている。
まだ配属されて三ヶ月ほどで、メンバーの素性はよくわからない(私が積極的に理解しようとしていないだけか)が、今のところは問題はないようだ。

並々ならない倍率であることが幸いし、新人隊員たちの中でも私は平均程度の年齢だった。
世間はメンバーチェンジに感心を払わない。払いすぎて気がついたものが指摘しても、こちらが「別人だ」と言えばそれで解決した。

 陰鬱とした気分で、取り巻く現実が面倒になってくると過去に想いを馳せることは珍しくないだろう。
私も例に漏れない。二年前。その時期が一番楽しかった。心身共に充実していた理由の第一は、やはり、気の合う友人ができたからなのか。

 ヒーロー協会関東支部で製造されたものがいる。

私がこちらに来て唯一気を許した相手であるそれは、
二メートルを越える体躯に黒コートを羽織り、鏡面のサングラスをかけていて、血の色の目をしていた。
そんな容貌から、科学者たちは秋の一つ星であるフォーマルハウトと名づけ、日々訓練を課していた。

星に馴染みの無かった私は星の名前で検索をかけてみると、なるほど意図的に符号されたものなのだなと頷いてしまった。
少し目を通しただけなのにも関わらず、相似点がいくつか発見できたことから、名前が先に考えられ、沿うように肉体が作られたのだろう。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 00:40:25.14 ID:rJ8YkPoV0 [6/32]

 『史上初の存在』である彼(生殖器の有無は確認していないが、胸部の膨らみがないことから男性だと察する。
というよりも、あんな女がいてたまるか)と初めて顔を合わせたのは、ヒーロー協会から指定されていた日よりも七日間前であった。

裏での事情を全て汲み取ることはできなかったけれど、様々な分野での威信がかかっており、
成功すれば広い分野へとアピールすることができ、勢力を伸ばしていけると上層部が踏んでいたことは間違いない。

 期待を一身に受けた初の『人間外のヒーロー』は、生みの親である研究員たちを殲滅して協会を飛び出した。
飛び出す際に起きた悶着について私はよく知らない。その日私は有給休暇をとっており、誰かに聞こうにも雰囲気がそうさせなかった。

心の底からヒーローの組織に傾倒している者たちは私を指差して「こいつは毒された!」と叫ぶだろうか?
いや、私がフォーマルハウトと出会って会話していたことを誰にも話さなかったことから、答えはわかりきっている。

それは秘密裏に行われていた会合などではなかった。堂々と、とも言えなかったけれど。
屋上へと向かう階段。施錠されている屋上へと続く扉の前に座り込んで、私たちは話していた。
素敵な、ドラマティックな展開なんてなかったが、当時確かに言えたことは、私がその時間をとても大切にしていたことだった。

 舞台のような戦闘現場における羞恥や愚痴としてこぼすと「黒髪に日本刀。定番じゃないか」なんて言い、
フォーマルハウトが笑った。生まれたばかりであるはずの彼はどこでそんな知識を入手したのだろう。

 階段での日々。二年前の出来事。連続して思い浮かぶ情景。
フォーマルハウトとの出会いは、私にとって間違いなく暗闇に浮かぶ星となっている。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 00:41:30.15 ID:rJ8YkPoV0 [7/32]

          <_プー゚)フエクストプラズマンの憂鬱のようです


          #7「神様のメモ帳」

            未来は神様のレシピで決まる


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 00:46:12.11 ID:rJ8YkPoV0 [8/32]

( ;ω;)「おおおおおおおおおん!! ミルナァァァ!!」

 同僚であるジャスティスイエローが死んだ。
殉職の連絡を受けた私は霊安室に来てみたものの、どういった反応をすればいいかわからずただ立ち尽くしていた。

ジャスティスレッドであるリーダーが死んでいるとは思えないほどに綺麗な亡骸に寄りかかって大声を上げて泣いている。
いつも黄色の戦隊スーツに身を包んでいた彼の本名がミルナだということを、私はリーダーの叫び声で始めて知った。
それほどまでに薄い関係性だとは思わなかったが、名前を知らないことを気に留めなかったことから実際はもっと薄い繋がりだったのか。

 そういえば、見ないな。感心はその程度しか払っていなかった。
活動する日に集合場所に集まらなかったことと、無断欠勤が許されないことから、何か別の指令を受けているのだろうと勝手に判断を下していた。
事実、その推測は当たっていたようで、上層部の命令を受けてヒーロー協会関西支部へと出向いていたらしかった。

運の悪いことに、向こうに在住している間に関西支部が悪人に襲われた。そして、壊滅した。
それも、過去に例を見ない規模の襲撃であった。支部一つが簡単に壊滅するはずがない。
上層部の慌て方は尋常ではなくこの前代未聞の事件に対してどういった対策を採るか連日頭を悩ませているようだ。

 悪人――怪人たちが結託するなんてありえない。
雑魚が群がっていても連携の一つもとれやしない。ただ横に並んで一人ずつ飛び掛ってくるだけだ。

そう言ったのは、誰だったか。
いつかの同僚であったような気もするし、研修期間に聞いた言葉のような気がする。
確かに私が現場に派遣され、戦闘を行うと事実その通りだった。今でもそうなのだ。そうなのだが……

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 00:52:31.19 ID:rJ8YkPoV0 [9/32]

川 ゚ -゚)(フォーマルハウトの存在を、私は知っている)

 彼らは間違いなく団結している。
戦闘において高度な連携攻撃などは繰り出しては来ないため、誰も気がつかないのだろうか?

私にはフォーマルハウトの指揮する部隊が「如何に被害を最小限に止めるか」との命令の元に動いているとしか思えないのだ。
知能の低い、遍く作業の末端である汎用型怪人にすら指令が行き届いている。
全体数が少ないためどんな一匹(人?)でも重要な頭数と考えているからだろう。

だとすれば、やはり、一般的に溢れている怪人たちと彼の怪人を同列に扱うのは無理があった。

川 ゚ -゚)(……いや、違うな)

 私は、彼の指揮する怪人グループしか知らないのだ。
もしかすると、他の怪人たちもそうであると考えるのも妥当ではないか?

川 ゚ -゚)(一事を以て万端を知る……? いや、一つが有能だからって、全部が有能なわけがないじゃないか)

 連絡を聞いたのか、やがてメンバーが揃った。静かな霊安室が急に騒がしくなる。
皆、顔からは血の気が引いていたが汗を流していた。
 _
(;゚∀゚)「お、おい。ウ、ウソだろ……?」

ζ(;ー;*ζ「ううっ……」

 ジャスティスグリーンを担当しているジョルジュが覚束ない足取りでミルナへと近づいている。
所在無く突き出された腕が身体と一緒にふらふらと揺れていて、激しい精神の動揺が見られた。
ジャスティスピンクであるデレは遺体を確認した途端、口に手を当てて崩れ落ちるとそのまま泣き始めた。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 00:56:53.74 ID:rJ8YkPoV0 [10/32]

 それからしばらくの間、彼らは泣き続けた。
お互い声を掛け合い、ミルナについての思い出を語り始めたので私は気まずさを覚えて退散することにした。
 _
(;゚∀゚)「お、おい。待てよ。どこに行くんだよ」

 構わず私は彼らに背を向けていたがもう一度「おい」と呼びかけられたので振り返ると、ジョルジュが私を呼び止めているようだった。
デレとリーダーも私へと視線を向けており「一緒に仲間を偲ばないなんて、どういうことだ」と非難する感情を込めていた。

川 ゚ -゚)「どこって、訓練だけど」

ζ(;ー;*ζ「酷いわっ! クーさん……貴女はミルナ君のことが悲しくないんですかっ!?」
 _
(#゚∀゚)「そうだぜ! アンタいつもつまらなそうな顔してさ! 今だって面倒臭いとか思ってたんだろ!!」

 デレはこんなにも非情な人間がいるなんて信じられないわと全身で表現した。泣き声が一層大きくなる。
ジョルジュは若々しさというのか、荒っぽい動作(舞台染みた仰々しい身振りとも言える)をして私を指差した。

 私が何も返事をしないことに腹を立てたのか、ジョルジュはさらに私へと怒りの言葉をぶつける。
デレはいつの間にか手にしていたハンカチで顔を覆い、私へと向けた軽蔑の感情を体中から溢れさせている。

川 ゚ -゚)(霊安室では静かにしろよ……)

 私が属した隊で殉職者が出たのはこれが初めての経験であったため、勝手がわからない。
親族でもないのに霊安室に入れるのかだとか、我々以外に誰もいないのに警備は大丈夫なのかだとか、不思議な点がいくつもある。

それに加えて目の前の摩訶不思議な出来事だ。溜め息をつきそうになったけれど、さすがに堪えた。
関わりがほとんどなかった相手とはいえ、同じチームでパトロールを共にした仲なのだ。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:00:45.29 ID:rJ8YkPoV0 [11/32]

( ^ω^)「待つお。二人とも」

 死者を愚弄する気持ちは微塵もないことを弁解しようと頭の中で言葉を考え始めた途端、リーダーが口を開いた。
いつの間にか泣き止んでおり、ミルナへと寄りかかることもしていない。
ジョルジュとデレの動きが止まり、私への非難をやめたことを確認すると、力強い口調で言葉を続けた。

( ^ω^)「クーはそんな薄情な人間じゃないお。
       彼女があまり感情を出さない人間であることは二人も知ってるお?
       同じ仲間が死んだんだお。心の中は悲しみでいっぱいに決まっているお」

(#^ω^)「それなのに、気丈に振舞っているクーに向かってなんて口の訊き方だおッ!!
       悲しいけれど泣いていても何にもならない! もう仲間が二度と失われないようにもっと強くならなきゃいけない!!
       ミルナを護れなかった悔しさを自分のバネに変えて……誰も悲しまないような世界にしてみせると!!」

(#^ω^)「自分一人でどんな悪人も倒せるように特訓するッ! そうやってクーは言ってるんだお!!
       二人ともいますぐ謝るお!! 『悲しんでいない』だなんてクーだけじゃなく……ミルナへの侮辱にもなるんだおッ!!」

 リーダーがジョルジュとデレを怒鳴りつけた。
真っ赤な目には強い意志が込められていて、遺体を抱えていた両手は今や握り締められており――
――その中には希望の溢れる未来を掴んでいるようでもあった。
 _
(;゚∀゚)「すいませんでしたァ――――ッ!!」

ζ(;ー;*ζ「ごべんばざいいいいいいい!!」

 私は何も言わず、霊安室を後にした。




18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:04:52.76 ID:rJ8YkPoV0 [12/32]

 訓練室へと歩を進めていたのだが、途中、館内アナウンスで私の名前が呼ばれた。

「素直クール様。ご友人様がいらっしゃられました。正面玄関までお越しください」
友人? この辺りにはもう友人などいない。それに、友人が来たくらいで仕事中に抜けられるのか。
わかってはいたが、とんでもない企業であることを再認識させられた。

(*゚∀゚)「クール先輩。お久しぶりですっ!」

川 ゚ -゚)「つーか! 久しぶりだな」

 小柄な身体を折りたたんだ女性は私の後輩であった女性であった。
茶髪でショートカット。黒色のタイトなスーツ。多彩な表情。
二年間の月日が経っていたが、私の知っている彼女の姿となんら変わりが無かった。

 つーを見たとき私は真っ先に妹のヒートを思い出した。
まるで古くからの友人に感じ、彼女の研修中に私は声をかけ携帯のアドレスと電話番号を交換したのだった。

川 ゚ -゚)「しかし、どうしたんだ? わざわざ仕事先まで押しかけて」

(;*゚∀゚)「やっ、いやっ、あのですね……携帯電話は壊れてしまいまして」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:08:42.39 ID:rJ8YkPoV0 [13/32]

 聞けば、ヒーロー機関に正式加入できなかった苛立ちから夜の街を酒瓶片手に歩いていたところ、
三人の男に囲まれ、話しているうちに男たちは彼女を無理矢理どこかへと連れ去ろうとしたため、武力による解決を試みた。

一人目の脛を思い切り蹴り飛ばして膝が砕き、下りてきた顔面めがけて裏拳を叩き込んだ。
二人目が反応するよりも早く懐に潜りこみ、肘鉄を鳩尾へと思い切りめり込ませ、次いで逆の手による側頭部を打突した。
三人目は逃げようと身を翻したが、素早く追撃したつーはそのまま背後から思い切り十六文キックを喰らわせた。

その際にポケットから携帯電話が飛び出した。
新たな敵だと勘違いした彼女は空中に浮かぶ携帯電話を蹴りぬき粉微塵にしてしまったという。
相当酔いが回っていた彼女は動くもの全てを自分の敵を認識していたのだ。

川 ゚ -゚)「いや、恐ろしいな君は」

(;*゚∀゚)「あははは……」

 後頭部へと手をやるつーと携帯のアドレスを再び交換し終わると、私は受付嬢にしばらく外出する旨を告げた。
喫茶店にでもいかないか。と誘うと彼女は弾けるような笑顔になり「ぜひ!」と賛同してくれた。かわいいやつめ。


 コーヒーを飲み終わり、ケーキを食べ終わった我々は世間話に興じていた。

 「そういえば映画が好きだったよな。オススメはあるか?」「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドアとかどうですか」
「へえ。面白そうだ。今度借りてみるよ」「リメイクは見ないで下さいね。くれぐれも間違えなく」「わかったよ」
「先輩は読書家でしたよね。何かオススメの本はありますか?」「君は猫が好きだったな? それじゃあ夏への扉がオススメかな」

 話題は尽きる兆しすらみせない。次から次へと話が涌いてくる。
二年間も出会っていなかったのに、よくもこんなに相手のことを覚えているものだなと自分と相手に驚いた。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:12:45.52 ID:rJ8YkPoV0 [14/32]

(*゚∀゚)「先輩は最近どうですか? ヒーローちゃんとやれてますか?」

川 ゚ -゚)「ん? 中々順調だよ。可もなく不可もなくってところだ」

(*゚∀゚)「で、聞きたいことがあるんですけれども」

 こうも前置きされては身構えてしまう。なんだろうか。
ヒーローである私の境遇のついて怨恨めいた言い回しをぶつけられるのか? 皮肉めいた口調で私は批判されるのか?
怯える心を悟られないようになんとか、どうぞ、とだけ言うことができた。

(*゚∀゚)「すっごく背が高くて、服が真っ黒で、目が真っ赤な人って知りません?」

川 ゚ -゚)「……」

(*゚∀゚)「知りませんか? 確か、私が研修期間の頃に見かけたことがあるんですが……」

 フォーマルハウトのことだとすぐにわかった。
一瞬頭が真っ白になってしまったので、流れるような会話の場面をせき止めてしまった。
彼女は怪しんでいるだろうか。彼についていったい何を調べているのだろうか。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:18:04.02 ID:rJ8YkPoV0 [15/32]

 その頃の彼は実践投入前で、自身の見識を広めるためにヒーロー機関の敷地内だけの移動が許可されていた。
私の目が届かないところでつーと彼が出会っていても不思議ではない。私は彼をじっと監視していたわけではないのだ。

 上記のようにこうやって状況だけを言えば確かにありえる可能性であったが、彼の行動を省みるに、かなり不思議ではあった。
何故ならフォーマルハウトは私以外の人間に目撃されることを酷く恐れていた。
既に飛び出す意思が固まっており、ヒーロー側に図体を覚えられたくないと打算していたのだろう。

もしかすると、私に姿を見せるつもりもなかったのかもしれない。
相手の不注意か、故意か。相手の真意はわからないが、私の倦怠がいざなった結果であることは確かだった。

川 ゚ -゚)「そんなに懐かしいことを、どうして今更聞くんだ」

 冗談めかした声色を意識してみたが、実践できている自信がない。
問い詰めるような圧迫した口調になっていやしないだろうか。

(*゚∀゚)「やっ、あれだけ大きな方でしたからヒーロー関係者だと思っていたんですけど……
     二年間も経つのに一向にヒーローとして活躍しないでしょう? おかしくありませんか?
     あっ、私と同じで研修期間中で、落選しちゃったとか……?」

川 ゚ -゚)「まあ、そんなものだろうな……いや、彼はヒーローだよ。
     私の中では、彼は、間違いなくヒーローなんだ」

(*゚∀゚)「へええ……すごい恥ずかしいセリフですけど、大丈夫ですか先輩?」

川;゚ -゚)「なっ!」

 君よりも私はもっと彼を知っているんだ。
そういった醜い女の嫉妬心が剥き出しになってしまい、こんな思わせぶりな発言をしてしまった。なんて浅ましい女なのだろう!
何よりも恐ろしかったことが、つーに指摘されるまで私は羞恥心をまったく覚えなかったということだ。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:22:25.07 ID:rJ8YkPoV0 [16/32]

 その会話を最後に、つーは「それじゃあそろそろ」と帰ってしまった。
まだまだ会話していたかったのだけど、外を見るともう夕焼けが空に色を与えていて、私も慌てて機関へと戻った。

 訓練をしなかったことが、チームメイトに申し訳なさを感じたためこれから訓練室へと向かおうとするとまたも呼び止められた。
声の主は受付嬢で用件は「ジャスティスレンジャーは至急第三会議室に集合」だと告げられた。

川 ゚ -゚)(サボったことに怒られるか? いや、あれは外回りだ)

 不穏な予感が去来したが、すぐに何もしていないと気がついたので堂々と会議室へと歩く。少々急ぎ足で。
しかし、訝る気持ちは大きくなるばかりだった。チーム単位で呼び出されなければならないのか。私は静かに仕事をしたいのだ。
とはいえ、二つしかないヒーロー協会の機関の一つが壊滅したのだから、粗方の内容は予想できた。


 ノッキン・オン・ブリーフィングルーム・ドア。
入室を許可する返事を受け取り、第三会議室へと足を踏み入れる。コの字に木製の机が並んでいる。
そこにはミルナを除いたチームメイトといつも私たちに指示を飛ばす司令長官がいた。

(´・ω・`)「クー。まあ座ってくれ」

川 ゚ -゚)「失礼します」

 リーダー、ジョルジュ、デレが私へとなにやら強い感情を秘めた目を向けてくる。
そして対面に座った司令長官も緊迫した面持ちで、指を組んでいた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:26:33.07 ID:rJ8YkPoV0 [17/32]

(´・ω・`)「もう少し待ってくれ。今回は君たちだけの話じゃなく、関東支部全体が動く作戦だからね。
      大きな第一会議室から一番小さな第三会議室までヒーローで埋まってるんだよ。ああ、今のヒーローっていうのは現場投入者ね。
      まあ、早い話が、悪人たちの殲滅だよ。ヒーローたちで作戦を練って効率よく殺りましょうって話を今からするのさ」

 やはりか。
無意識のうちに舌打ちをしていた。全身に力が篭る。拳を握り、歯を食いしばった。


 長くの間動き続けていた司令長官の口が止まった。一息はき、私たちを見渡す。

(´・ω・`)「大体の役割はわかったかな?」

(#^ω^)「納得できませんおッ! 僕は市民を助けたいからヒーローになったんですお!!」

(´・ω・`)「じゃあいいじゃないか。『避難する市民の誘導』。ピッタリだな。何が不満だ?」

(#^ω^)「僕は、僕はッ! 仲間の仇を討ちたくてッ!!」

(´・ω・`)「支離滅裂だな。それに、お前の言ってることは『悪人をぶっ飛ばしたい』ってことだぞ? わかって言ってるんだろうな?
      えぇ? 『正義』のヒーローよ。お前は市民を護りたいのか悪人を殴りたいのかどっちだ?
      平和の維持者か、暴力の行使者か。答えによっては、君を解雇するぞ」

(;^ω^)「――ッ!」

(´・ω・`)「答えろ」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:30:30.82 ID:rJ8YkPoV0 [18/32]

(;^ω^)「……悪人を倒すことが市民を護ることへと繋がりますおッ! 平和を維持する正義の暴力ですお!」

(´・ω・`)「市民を避難させるほうが実感があるだろうよ。目の前に護るべき存在がいるんだから」

(;^ω^)「しかし……! 警察やただの職員たちと混じってというのは……」

川 ゚ -゚)「リーダー。仕方ないんだ。避難行動だって立派なヒーロー活動さ」

(;^ω^)「くっ……」

 私の言葉によって落ち着きを取り戻し、自分を嘲笑う先輩ヒーローの視線に気がついたリーダーはそのまま俯いてしまった。
下卑た笑いを浮かべている奴らに視線を向けると、私にまで同種の視線を浴びせてきた。

川 ゚ -゚)(……)

 椅子から立ち上がり、そいつらへと歩く。
ジョルジュとデレが何か言ったようだったが何も聞こえない。私を劣等を見下すあの視線を許してたまるか。
笑っていたヒーローは五人。手前の二人組みのヒーローと、奥の五人組のヒーローの過半数。問題ない。全員病院送りにしてやる。

 飛びかかろうと足に力を込める。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:35:00.86 ID:rJ8YkPoV0 [19/32]

(´・ω・`)「素直クール!!」

川 ゚ -゚)「……なんですか?」

(´・ω・`)「仲間割れなんかしてる場合じゃあないんだよ。一人でも戦力が欲しい状況なんだ」

 「そんな奴らが戦力になるのかよ」二人組みが小さな声で会話を交わした。
「姉ちゃん。おれの飢えた下半身を救ってくれよ」近くのものたちが堪える素振りもなく、思い切り噴出した。

(;´・ω・`)「おい馬鹿――ッ!」

 二人組みの名前を私は知らなかったが、二人は白一色と黒一色という対極の服装をしていたので認知されやすいのだろうなと思った。
並んで座っている二人は男性と女性のようであった。黒が男。白が女。そしてそれが私に近い順番だ。
座っている黒の胸倉を掴んで持ち上げて投げ飛ばし、白も同様にそうした。

木製の机がコの字に並んでいる。それに縦線として肉製の机が追加された。
机というよりも椅子として代用してやったほうがいいか。
こうしてめでたくロの字を描くことに成功した。第三会議室は幸福に包まれた。

(;´-ω-`)「……」

 司令長官だけが頭を抱えていて、他の皆は口を大きく開けていた。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:39:09.47 ID:rJ8YkPoV0 [20/32]

川 ゚ -゚)「なんだ、気絶したのか。受身くらいとったらどうなんだ」

(´・ω・`)「素直クール」

川 ゚ -゚)「はい」

(´・ω・`)「君も、現場に参加しなさい」

川 ゚ -゚)「避難を誘導する活動にあたりますが」

(´・ω・`)「いや、悪人をなぎ倒す係に変更だ」

川 ゚ -゚)「いえ……私は……」

(´・ω・`)「その二人は今売り出し中の二人なんだよ。ヒーロー同士の訓練成果から見ると、実力もそれなりにあるんだ。
      こんなにもあっけなくやっつけられる君は、間違いなく前線配置だ」

川 ゚ -゚)「……勘を取り戻すため、訓練を積みたいのですが、猶予はありますか?」

(´・ω・`)「決行は一週間後を予定されている。それだけでかつての素直クールに調整できるか?」

川 ゚ -゚)「なんとかやってみます」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:43:41.50 ID:rJ8YkPoV0 [21/32]

 これは好都合だった。全面戦争となれば間違いなくフォーマルハウトが絡んでくる。
避難活動なんて放り出して彼の元へと真っ先に飛んでいくつもりだった。話したいことが山ほどあった。
愚痴だとか、そっちはどうなんだとか。どうしてこんなことをするんだとか。二人きりで、誰の邪魔も入らずに話したかった。

(´・ω・`)「と、いうわけで会議はこれで終わり。長い間お疲れ様。でもしっかり頭に叩き込んでおいてね」

 威勢の良い返事が会議室中に響く。司令長官が退室すると、先輩方ヒーローが続いて出て行った。
気がついたモノクローズは仲良く肩を組み、支え合って退室していく。私たちへとなんらかの行動を起こしたりはしなかった。
私の部隊は一番新米であるため一番最後に退室することになるのだが、リーダーと他二名は動こうとしない。

 考えてみれば、私は前線を渇望していたリーダーを尻目に出番を与えられたのだ。
これはリーダーにしてみれば酷い裏切り行為だと感じられるのではないだろうか。メンバーがリーダーを上回るなどと。
隊長より優れた隊員などいらぬ。そうやって怒鳴りつけられるだろうか? しかしそれならまだマシだ。落ち込まれたらどうすればいい。

川;゚ -゚)「あー……」

(; ω )

(  ω )

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:47:05.30 ID:rJ8YkPoV0 [22/32]

( ^ω^)

( ^ω^)+

 俯いていたリーダーは顔をあげると私の手を握ってきた。
子供のように瞳を輝かせて、力を送り込むかのように強く強く私の手を握っている。

( ^ω^)「クーはやっぱり只者じゃなかったお! オーラが違うと思ってたんだお!!」

 隣から細く白い手が伸びてきてリーダーのふくよかな手に重なる。

ζ(゚ー゚*ζ「そうね……きっと昔、数々の辛いことがあったのよね……さっきは酷いこといってごめんなさい」

 鍛えられた小麦色の手が更に重なり、力を込めて握られた。
  _
( ゚∀゚)「頑張ってくれ!! 俺たちの分も!!」

 彼らは根本的に何かを勘違いしていると思うが、そこに水を差すほど私は無粋ではない。
力強く、頷いて見せた。行われる最終決戦へと向けて、私は拳を握る。

川 ゚ ー゚)「任せておけ!」



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:51:42.80 ID:rJ8YkPoV0 [23/32]

 それからたった二日後のことだ。作戦中止の命令が我々全員に下された。
作戦を告げられた日から家に帰らずヒーロー施設内で訓練を積み、体調の調整をしていた私はまず詳細を求めた。
伝言を頼まれたらしいヒーローは「第一会議室へ」とだけ告げるとすぐにどこかへと行ってしまった。

そうした次の感情は気恥ずかしさだった。
まるでラストシーンのようなやり取りを同僚と交わしたというのに、この現実の運びは一体なんだ。
転校する友人のためにパーティを開いたら、友人が転校をしなくても良い事情になった。この状況に酷似している。

 だが、『お別れ会』と違う決定的な点があった。
友人が幼い場合、親の事情に振り回されることは仕方ないのだが、今回の原因は私にあるのだ。
完全な直接的原因とは言えないが、それは屁理屈というもので、間違いなく私の存在が招いた事件である。

 素直クールの実の妹である素直ヒートが警察に逮捕された。
逮捕されたのは十分ほど前だそうで、ヒーロー機関の息のかかっている警察官から上層部に連絡が入った。
そしてどこからか情報が漏れ、下っ端のヒーローにも伝わる規模の噂となっている。

マスコミはまだヒーロー機関へとやってきていないが、情報を掴むと話題性の大きさからすぐさま飛びつくだろう。
施設内にこれだけ短時間で流布した噂だ。誰がどこからリークするかわかったものではない。
ヒーローが通報して何か得するとは思えないが愉快犯がするかもしれないし、誰かスパイが紛れ込んでいるかもしれない。

何にせよ、時間の問題だと言える。自然にマスコミが情報を入手するかもしれないのだ。
だからこそ、上層部は全てに優先して対策を打とうと慌てふためいているのだ。

川 ゚ -゚)(どいつもこいつも……)

 どこを歩いていても陰口と視線が私へと向けられる。
行き場の無くなった意気込んだ気持ちは、私への誹謗へとかわったのだ。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:55:21.24 ID:rJ8YkPoV0 [24/32]

(;´・ω・`)「もう、聞いているね?」

川 ゚ -゚)「はい。ヒートが逮捕されたようで。躾のなっていない妹で本当に申し訳ありません」

(;´・ω・`)「いくら謝られても関係がないんだよ。君の申し訳ないと思う気持ちは事態を何一つ好転させない」

川 ゚ -゚)(ならば逆に傍若無人な態度をとれということだろうか)

(;´・ω・`)「とりあえず、マスコミへの対応を我々は考えているよ。
       慇懃無礼でも駄目。傍若無人なんてもっての他。関西支部のときのように我々を擁護してくれればいいのに。
       くそ。我々は普段ミスをしないから、どんな些細なミスに対しても奴ら鬼の首をとったかのように騒ぐんだ」

川 ゚ -゚)(先入観だ。……実態は、作り上げたイメージだけど)

(;´・ω・`)「戦闘訓練を行っていない、比較的大人しい『君』を派遣させたから、君はどこかで身を潜めろ」

川 ゚ -゚)「私が受け答えをすればいいのでは?」

(;´・ω・`)「駄目だ。お前は大事な戦力なんだ、毎日ずっと押しかけてくるマスコミ相手にストレスを溜められたらかなわない。
       ないとは思うがマスコミに暴力でも振るってしまうと、とてつもないことになる。いつまで経っても悪人を掃除できなくなるだろう。
       ただでさえ今は、関西支部についてのゴタゴタがあるというのに……」

川 ゚ -゚)(『比較的大人しい君』とか言ったくせに)

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 01:59:06.76 ID:rJ8YkPoV0 [25/32]

(;´・ω・`)「頼んだぞ?」

川 ゚ -゚)「はい」

(;´・ω・`)「我々が手を回すから大衆に知られることは無い。情報を得たマスコミも三日もすれば飽きて、すぐに忘れるだろう。
       その頃に出勤してきてくれ。そして、その後再び作戦会議を開く」

川 ゚ -゚)「了解しました」

(;´・ω・`)「じゃあ、そのようにスケジュールを調整しておくからな」

川 ゚ -゚)「はい。ありがとうございます。……しかし、私一人にそこまで合わせることはないのでは」

(´・ω・`)「……自惚れるなよ。お前に合わせてるんじゃないんだ。こっちの都合もあるんだよ。
      言わなくてもわかると思っていたが、お前が出勤してきた当日じゃあない。日程が整えば殲滅日を伝えるよ」

川 ゚ -゚)「……申し訳ありません」

(´・ω・`)「まあ、いい。……いいか? 絶対に知り合いに見つかるなよ。
      経費で落とせるようにしておくから、ビジネスホテルにでも篭ってろ」

川 ゚ -゚)「了解しました」

(´・ω・`)「念のため聞くが――妹は一人だけだったよな?」

 軽口を叩けるということは、まだそんなに逼迫した事態ではないということだろう。
私は返事の代わりに笑ってみせ、挨拶をしてから退室した。窓から入ってくる日の光が、やけに腹立たしかった。



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 02:03:14.06 ID:rJ8YkPoV0 [26/32]

「彼女はよく自分の姉についての不満を言っていました。冗談のように笑いながら言っていましたが回数がとても多かったです。
 僕ら男子は彼女のお姉さんのファンだったんですよ。綺麗ですしヒーローですし、まあ僕らとしたら当然ですよね。
 ただ、彼女がこれを知ったときとても怒ったんです。正直怖かったですね。どうして! と叫んでいました」

川 ゚ -゚)「なんだと……?」

 夕方、場末のビジネスホテルで私はテレビ画面に釘付けになっていた。
司令長官の元から退室し、荷物を纏め、目立たない場所へと向かった。
あれから私が行ったことはそれだけだった。その間にまさか、ニュースになるとは。これには驚いた。


 テレビではヒートの学校生活をクラスメイトたちが話している。
私の知らない妹の一面がテレビ画面から流れてくる。姉妹といえど側面しか見ていられなかったのだ。
改めて、今回の騒動は私の責任であると痛感した。

 テレビ画面がスタジオへと切り替わる。
台座の向こう側にはコメンテーターが並んでいて今回の事件について言及していた。
「俺にはわかっているんだよ。お前らは馬鹿だ」そういう態度が、ありありと感じられた。

 スタジオと現場を繋ぐスクリーンには受け答えをする私が映っていて、
「少女Aの姉であり現役ヒーローである素直クールさん」とテロップが表示されていた。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 02:06:55.09 ID:rJ8YkPoV0 [27/32]

 しかし、

川 ゚ -゚)(ヒートに怒りや憎しみの感情を抱かないのはどうしてだろうか)

 私の知っているヒートは活発で、誰にでも臆することなく話すことができ、成績も優秀であった。
青春を謳歌している自分の妹。何の不安もなく輝かしい未来へと突き進む優秀な妹。紛れもなく今を生きている彼女。
同年の頃既に暗澹としていた私とは違う。私みたいにはきっとならない。そうやって思ったことがあっただろう?

川 ゚ -゚)(ということはつまり――)

 ――血の繋がっているヒートが私と同じでよかった、と――

川#゚ -゚)「――ッ!!」

 激昂した。
そう思ったのは爆発にも似た大きなくぐもった音を聴覚が捉えてからだった。
テレビ画面には私の右拳が叩き込まれ、向こう側にまで貫通している。引き抜くと指や手首に傷ができて血が流れていた。

 先ほどまで私と同じ姿をした『私』が受け答えしていた場所から配線が覗いていた。



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 02:11:00.78 ID:rJ8YkPoV0 [28/32]

 受付に何も言わずホテルの外へと飛び出した。とにかく落ち着きたかった。
普段鉄面皮と呼ばれている自分が信じられなかった。どうやっていつも感情を抑制していたっけ。
ただただ何事にも無感動になれるように身構えていただけじゃないのか。期待外れは出来事が起きても被害を被らないように。

 自動販売機を見つけたが、手持ち無沙汰である私は何も買うことができない。
そう思うと無性に水分が欲しくなり、私は鍵を握り思い切り手前に引っ張った。
大きな音を立てて自動販売機が横開きになり、私は缶コーヒーを一本だけ取り出してまた歩き始めた。

 少しすると公園を見つけた。
あらゆることを据えてしまいたかったので、私は迷わずベンチへと座り込んだ。

川 ゚ -゚)「ふー……」

 ぼうっと視線を町並みへと向ける。遠くの空には、私の心と正反対の絶景が広がっている。
夕陽に照らされる白い雲。この景色を写真へと収めてコンクールに提出すれば中々いいところまでいけるだろう。
小説ではよく空は人物の心情描写に例えられる。しかし、こんなにも鮮やかな心の内を持つ人物なんて、いるのだろうか。


 ふと気がつくと、フォーマルハウトがいた。
私は驚きのあまり何の反応もできなかった。彼はゆっくりと私へと近づいてくる。
何か言わなきゃと思い、言葉を探す。久しぶり、どうにか声を絞り出して、それだけ言った。

<_プー゚)フ「ジャスティスブルーがどうしてこんなところに」

川 ゚ -゚)「私が二人いたらおかしいだろう」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 02:15:36.25 ID:rJ8YkPoV0 [29/32]

<_プー゚)フ「やっぱり影武者だったのか」

川 ゚ -゚)「クローン技術かなどちらかというと。そのまんま私ってわけではないけど」

 それより、と私を少し間を取った。彼の上から下まで視線を走らせる。この間に幾分か落ち着いた。

川 ゚ -゚)「今日はヒーロー時代の服装か。フォーマルハウト」

 聞いてもらいたいことがたくさんあった。話したいことがたくさんあった。
私は一つ一つ頭の中で整理して、次に何を言おうかと考えながら会話を続けた。


川 ゚ -゚)(もう夜だぞ。どうして十七時以降に呼び出されなければいけないんだ。定時はどうした)

 なんてことを言えるはずもないが、司令長官は私を呼び出したくせに用件なんてそっちのけで狼狽している。

(;´・ω・`)「まさか強硬手段に出るとは……」

爪'ー`)y‐「我々が全てを掌握してしまう前に、先駆けて放送する。いや中々のものだと思うよ。
       きっとものの道理がわからない新人たちがやったんだろうね。
       出世の道を犠牲にしてでも真実を伝えるのがジャーナリズムなんだろう」

 けれど、まあ、とヒーロー協会関東支部を統括する男が続けた。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 02:19:24.79 ID:rJ8YkPoV0 [30/32]

爪'ー`)y‐「犠牲になるのが自分と関係者の命だとわかっていれば、行わなかったかな?」

(;´・ω・`)「ということは?」

爪'ー`)y‐「直ちに消してしまえ。そして、クール君」

 私が公園での出来事を反芻していると、不意に名前を呼ばれた。

川 ゚ -゚)「なんでしょうか。総領」

爪'ー`)y‐「たった半日ほどだったが、君はもう機関の施設内へと戻りなさい」

(´・ω・`)「謹慎解除ということじゃあないぞ。逆だ」

川 ゚ -゚)「どうしてでしょうか? 私が何か……」

(´・ω・`)「出歩くなと言っただろう。誰かに姿を見られたらどうするつもりだったんだ?
      一般人が『あれれ~ジャスティスブルーが二人いるよ~』だなんて言ってみろ。
      面倒以外に繋がる考えが浮かぶか? ヒーローはたった一人なんだよ」

 『ヒーローはたった一人』。司令長官は何気なく口にしたその言葉が私の心の奥底を刺激する。

爪'ー`)y‐「我々はまだまだ発展しなければいけないんだ。
       関西支部が潰されるまではのんびりやろうと思っていたのだけどね、そうも言ってられない」

川 ゚ -゚)「……」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 02:23:37.53 ID:rJ8YkPoV0 [31/32]
爪'ー`)y‐「悪人を、一匹残らず駆逐する。作戦というほど作戦はないけれど、自力で勝るこちら側だ。まあ問題ないだろう」

(´・ω・`)「とはいえ、気を抜いてはならない。だからクー。君も強化しなきゃならないんだ。
      お前は謹慎処分として、明日から、来たるべき決行日まで我々が決めたスケジュールに従ってもらう」

 公園での出来事が、頭の中にまだ残っている。
「なあ、私たちの協会はどうなっているんだ?」私が言った。
「それを駆逐すべき悪人に問うのか」彼が言う。

川 ゚ -゚)「我々は、私たちは、どこまで発展するのでしょうか」

(´・ω・`)「何?」

爪'ー`)y‐「発展できるところまでだ。まだだよ。まだだ」

 うわごとのように「まだ、まだ」と総領が呟き続ける。

爪'ー`)y‐「まだだよ。まだ終端速度には達していない。
       まだまだ我々ヒーロー機関は成長を続けられる! もっと規模を大きくしようじゃないか!」

 市民から支持され、莫大な富を得て、大多数のマスコミと警察官を抱え込んでいる。
ヒーロー志望の若者の数は計り知れず、見事就職したものは安寧の将来を約束される。
権力どころか暴力に訴えても負ける道理はなく、世の情報を網羅しており一般人に何をしても裁かれることはない。

 絶対に疑われない存在で、自らの都合で世の中を動かせて、全てを嘲笑う存在を、何と呼称すればいいのだろう。


 #7 「神様のメモ帳」 終わり



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 02:24:22.51 ID:rJ8YkPoV0 [32/32]

終わりです。今までで一番長いですね。
初めて全て書き溜めました。それくらい神経を使う話だったのだ。

逃亡しかけていましたが、某所でこの作品の感想を頂きやる気が再燃しました。もっと頂戴!
読まれている証明というのは本当にいいものですね。僕はここに立っているよ。

音楽フェスというものが開催されるみたいですね。
したらばをここに貼り付けて、参加を促しておきます。
ttp://jbbs.livedoor.jp/internet/10981/

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